権威の原則(The authority principle:ロバート・チャルディーニ(米国の心理学者)が定義した6つの影響原理の1つ)は、マーケティングでよく知られている。人々は一般的に、医師、裁判官、成功した起業家、食品評論家など、専門家や権威ある人物の意見を非常に重視する傾向がある。権威ある人が絶賛した商品を宣伝すれば売上が4倍になるというように、権威ある人のコメントは有利に働くことが多い。
見せ掛け
もちろん、オランダの地方政党であるStadsbelang Utrechtが行ったように見せ掛けも可能だ。市議選を前にして、「stemwijzerutrecht.nl」というウェブサイトを立ち上げ、投票先を決めていない有権者に対して、どの政党が自分の好みに最も合っているかを判断できるようにするためのアンケートを実施した。このアンケートは、投票先を決めていない有権者が、どの政党が自分の好みに合うかを判断するのに役立つものだ。都合のいいことに、納得がいかない人のために、「kieskompasutrecht.nl」という別の投票ガイドも用意されていた。しかし、結果はいつも同じだった。用意された別の投票ガイドのサイトもStadsbelang Utrechtのものだったから、驚くにはあたらない。同党は、自分たちの投票ガイドを「信頼できる結果を出す、独立した素晴らしい投票ガイド」だと説明している。
この行為は、1989年から使われている本物の独立した投票ガイド、StemWijzer(ステムバイザー、英語ではVote Match:有権者が自分と各政党の考え方の共通点や相違点を測定することのできるサービス)からはあまり良く思われてなかった。StemWijzerは、民主主義と法の支配のためProDemosによって開発された。投票ガイドの信頼を確保するためには、確実性と公平性が重要であるため、ProDemosはその評判を守るためにあらゆる手段を講じており、これには商標法の活用も含まれている。
商標権侵害
ProDemosのアプローチは成功した。Stadsbelang Utrechtは、本物のStemWijzerの人気と評判から利益を得ようとした最初の当事者ではなく、「StemWijzer」という用語を誰でも自由に使えるようにすべきだと主張したのも、これが初めてではなかった。2005年の判決でハーグ裁判所は、商標「StemWijzer」は比較的識別力のある、よく知られた強い商標になったとの判決を下していた。
商標権侵害は、すでに先の「referendumstemwijzer.nl」に対する訴訟で確認されていたのだ。「自らの政治的見解を宣伝するためにこの商標を利用することで、被告は紛れもなく、著名な商標「StemWijzer」の評判と識別力から利益を得ている。さらに、そうすることによって、被告は、商標「StemWijzer」の公平で独立しているという評判を損なった。」
品質保証
今回は、異議申立てが裁判にまで発展することはなかった。ウェブサイトstemwijzerutrecht.nlは、現在オンライン上には存在しない。自動車であれ、情報サイトであれ、消費者は商標を信頼するのだから、すべての商標は品質保証ということになる。