ロシア政府は、知的財産権を弱体化させ、国内で権利行使を行う権利を制限する措置をとっている。特許技術の無断利用、ブランド名やロゴの模倣使用、著作権で保護された作品の海賊版などが増える可能性がある。
ロシア政府は2022年3月6日の政令第299号により、国家安全保障上の理由から強制実施権の付与を決定した場合、「非友好的」な国に由来する発明、意匠、実用新案の権利者に支払うべき対価をゼロにすると決定した。この政令は、強制実施権に関するロシア連邦民法1360条(国家安全保障の利益のための発明,実用新案又は意匠の使用)を改正し、権利者への支払いを権利利用による利益の0.5%から0%に引き下げるものだ。
ロシアが非友好的とみなす国は、アルバニア、アンドラ、カナダ、EU加盟国、アイスランド、韓国、リヒテンシュタイン、マケドニア、ミクロネシア、モナコ、モンテネグロ、ニュージーランド、ノルウェー、サンマリノ、シンガポール、スウェーデン、台湾、ウクライナ、英国、米国である。(注:その他、日本、スイス、サンマリノ、豪州も指定されている)
また、2022年3月8日付の連邦法によると、ロシア政府は、商標などの独占的な権利を認めない商品リストを定めることができる。これまでのところ、商品リストは公表されていない。
さらに、ロシアの裁判制度は外国人の商標権を希釈化している。ロシアの裁判所は、欧米の経済制裁に報復するため、2つのペッパピグ商標の継続的な侵害を認めない決定をした。米国の玩具メーカー、ハズブロの子会社で英国にあるEntertainment One UK Limitedは、ロシアの起業家に対し、同社の「Peppa Pig」商標と「Daddy Pig」商標を使用したとして商標権侵害訴訟を提起した。この訴訟は、2022年3月3日に公開された判決で、ロシアのキーロフ地区の仲裁裁判所により棄却された。裁判長は、米国や欧州諸国による経済制裁を理由に「権利の濫用」である判じた。この判決を受けてか、ロシアでは既にマクドナルドやスターバックスなどの有名ブランドを明確に模倣した商標も出願されている。
Source: www.rapisardi.com; www.us.eversheds-sutherland.com