2022-08-30

中国:商標権侵害および不正競争紛争事件で先使用の抗弁が認められた事例 - UNITALEN

事件の経緯:
 双飛人製薬股份有限公司(以下、「双飛人公司」)は、登録商標「双飛人」の権利者であり、当該商標の指定商品は第3類のフロリダウォーターや化粧品などである。また、双飛人公司はハッカ水製品を指定商品とする2つの双飛人立体商標の権利者でもある。仏HARIBO Ricqles Zan社は、指定商品が第3類商品である登録商標「利佳」を保有しており、広州頼特斯商務諮詢有限公司(以下、「頼特斯公司」)が中国国内の宣伝、プロモーション、小売、販売を一手に引き受けていた。双飛人公司は、頼特斯公司らが利佳ハッカ水を生産、販売することで自社の登録商標の専用権を侵害し、またさらに不正競争行為を実施しているとして、人民法院に訴訟を提起した。一審法院は次のように判断した。利佳ハッカ水と「双飛人」商標の指定商品である「双飛人爽水」は同一商品に属す。比較したところ、権利侵害被疑商品の包装と双飛人公司の立体商標の構成は類似しており、また関連公衆に誤認、混同を生じさせる可能性があり、頼特斯公司は双飛人公司の立体商標権を侵害している。また、頼特斯公司は営利目的を実現するために、商品の宣伝において自社商品が「双飛人」商品(双飛人薬水)であることを強調しており、これは「双飛人」文字商標の権利侵害にあたる。このほか、利佳ハッカ水の包装・装飾と双飛人公司の周知商品の包装・装飾は類似しており、頼特斯公司の行為は不正競争にあたる。頼特斯公司らはこれを不服として控訴を提起したが、二審法院は控訴を棄却し、原判決を維持した。頼特斯公司は最高人民法院に再審を請求した。最高人民法院は再審で次のように判断した。頼特斯公司が提出した証拠は、仏HARIBO Ricqles Zan社が1990年代から中国本土の一部地域の新聞に「双飛人薬水」広告を掲載していたこと、掲載期間が比較的長く、発行地域および発行量も比較的多いことを証明でき、また仏HARIBO Ricqles Zan社が先に使用していた「双飛人薬水」に用いられている「青、白、赤」の包装に一定の影響力があったことを証明できる。双飛人公司は「双飛人薬水」が市場に存在することを明らかに知りながら、悪意をもって「双飛人薬水」の包装と類似した立体商標の登録を出願し、また権利を行使し、その行為は正当とは言い難く、頼特斯公司の先使用の抗弁は成立する。頼特斯公司の行為が登録商標専用権の侵害および不正競争にあたるとする双飛人公司の主張はいずれも成立しない。最高人民法院は一審、二審の判決を破棄し、双飛人公司の訴訟請求を棄却した。

典型事例の意義:
 本件は商標の先使用の抗弁の審査問題にかかわる。先使用の抗弁制度の目的は、善意の先使用権者が元の範囲内で継続して自身の一定の影響力がある商業表示を使用する利益を保護することであり、信義誠実の原則の商標法領域における重要な体現である。今回の再審判決は誠実経営がもたらす権利・利益を効果的に保護し、人民法院が知的財産権訴訟の誠実・信用体系の構築を強化した有益な模索であった。
(事件出典:中華人民共和国最高人民法院)

本文は こちら (集佳中国知財情報 No.192:双飛人製薬股份有限公司と広州頼特斯商務諮詢有限公司らの商標権侵害および不正競争紛争事件)