2022-08-01

工藤莞司の注目裁判:商標権の侵害が成立して、被告に対し使用の差止め及び損害賠償の支払いが命じられた事例

(「ぼてぢゅう総本家侵害事件」令和4年3月18日 東京地裁令和元年(ワ)第34096号) 

事案の概要 本件は、原告らが、被告による標章1「宗右衛門町趣味のお好み焼/ぼてぢゅう総本家」、同2「ぼてぢゅう総本家」を付した商品「冷蔵用むし焼そばセット」及び「冷蔵用お好み焼きセット(生)」」の製造販売行為は、原告Aが有する30類「穀物の加工品」等に係る本件商標1「ぼてぢゅう」に係る商標権(登録第638104号)を侵害し、また、原告Bが有する30類「穀物の加工品」等に係る本件商標2「ぼてぢゅう総本店」に係る商標権(登録第6118681号)を侵害すると主張して、原告らが、被告に対し、被告各標章の使用の差止め及び損害金等の支払を求めた事案である。

判 旨(本件商標1と被告標章1の類似性)について
 被告標章1は、暖簾を模した図案の上に2段書き文字を記載しており、図案部分は背景や文字枠として認識されるもので、出所識別機能があるとはいえない。他方、被告標章1の文字部分は2段書きで、全体的に見て、上段の「宗右衛門町趣味のお好み焼」が下段の「ぼてぢゅう総本家」に対し、小さい文字で、その内容に照らしても、需要者は、上段部分が、下段部分の説明書きと理解するといえるから、上段部分には出所識別機能があるとはいえない。そして、被告標章1の下段の文字部分は「ぼてぢゅう」と 「総本家」とを結合したもので、前者は、お好み焼き店のために創作された極めて特徴的な造語であるのに対し、後者は、「おおもとの本家」を意味する一般的な日本語であって(甲28)、その前後に接続する語句に関連する「総本家」と理解されるのが通常であるから、「総本家」から出所識別標識としての称呼、観念が生ずるとはいえない。そうすると、「ぼてぢゅう」の文字部分が、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるのが相当である。
 したがって、被告標章1は、その構成中の「ぼてぢゅう」の文字部分を抽出し、類否を判断することが許される。そして、被告標章1は、筆書きによる平仮名「ぼてぢゅう」を同大同間隔に左横書きした外観を有するのに対し、本件商標1は、筆書きの「ぼてぢゅう」を同大同間隔で左横書きにした外観を有するのであるから、両者は、その外観において類似し、両者の称呼及び観念が同一である。 以上によれば、本件商標1と被告標章1とは、類似するものと認めるのが相当である。(以下、本件商標2と被告標章1等との類似性は同旨で略) 
 以上、被告商品における被告各標章の使用は、本件商標権1及び2を侵害するものといえる。原告らの各請求のうち金銭の支払を求める部分は、原告Aにつき・・・万の支払を、原告Bにつき・・・万の支払をそれぞれ求める限度で理由がある。

コメント 本件は、商標権侵害事件裁判例で、商標権者が無断使用者に対して、権利行使をして認容された事例である。結合商標の類否判断においては、セイコーアイ判例(最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日 民集47巻7号5009頁)に従い、被告標章中の「ぼてぢゅう」が支配的部分、即ち要部と認定して、類似の判断をしている。正当である。
 被告が抗弁した権利濫用、先使用権の存在のいずれも、立証がないとして斥けられた。被告の使用の差止めの外、損害賠償として、使用料相当額(商標法38条3項)は売上高の3%の、計約1000万円を超える高額が認定されている。