2022-10-13

中国:CNIPA、「『商標権侵害の判断基準』に対する理解と適用」を発表(4条、5条、9条) - 北京路浩

 2022年8月12日に、国家知識産権局(CNIPA)が、「『商標権侵害の判断基準』に対する理解と適用」を発表した。国家知識産権局(CNIPA)によると、2020年6月15日、 国家知識産権局(CNIPA)は「商標権侵害の判断基準」を制定し、公布した。 商標権に関する法執行の業務指導をさらに促進し、基準の普及と解釈をさらに改善し、法執行者が規定の意味を正確に理解し、各地での実施過程における基準の適用に関する質問を迅速に答えるため、国家知識産権局(CNIPA)は、「『商標権侵害の判断基準』に対する理解と適用」を作成した。
 当文書は、38条からなる「商標権侵害の判断基準」を逐条解釈した上、各条文に関連する典型的な判例も紹介した。
 本稿は、「『商標権侵害の判断基準』に対する理解と適用」の重要な内容を取り上げ、抄訳の上、連載を行う。

第四条  商標を商品、商品の包装、容器及び商品提供取引文書に使用する際の具体的な形態には、以下を含むがこれらに限定されない。
(一)直接に貼り付ける・刻印する・焼き印する若しくは織り込む等の方法により、商標を、商品・商品の包装・容器・ラベル等に付着させ、又は商品に付帯するタグ・製品説明書・説明マニュアル・価格表等に使用する。
(二)商標を、商品販売契約書・領収書・手形・レシート・商品輸出入検査検疫証明・税関申告書等の商品販売に関連する取引文書に使用する。
本条に対する理解:
 本条は実務における商品商標の商標的使用の具体的な表し方に関する規定である。商品商標の商標的使用の主要な表し方は、商品または商品に関連する物の上に使用すること、及び商品の販売に関係する取引文書の上に使用することを含む。

第五条  商標をサービス提供施設及びサービス提供取引文書に使用する際の具体的な形態には、以下を含むがこれらに限定されない。
(一)商標を、紹介のパンフレット・スタッフの服装・ポスター・メニュー・料金表・名刺・クーポン・事務用文房具・便箋及び役務の提供のために使用されるその他の関連物品等の役務提供施設に、直接使用すること。
(二)商標を、領収書・手形・レシート・送金伝票・役務提供契約書・修理保守証明書等の役務に関連する文書資料に使用すること。
本条に対する理解:
 役務商標が商品商標と区別する特徴は、指定の対象は無形的なものであるところにある。
したがって、役務商標は直接にサービスに付き加えることができず、必ず実体的な担体によって具現化しなければならない。
 通常の場合、以下の場面で役務商標を使用することは、役務商標の商標的使用に該当する。すなわち、サービス提供の場所、サービスの看板、サービス用の工具、スタッフの服装、役務商標が印字される名刺、ハガキ、贈物等のサービス用品;役務商標が印字される帳簿、領収書、契約書等の商取引文書;広告または他の宣伝用品;サービスを提供するために利用されたその他の物等。
 サービスの過程に関わる具体的な物に商標を使用することは、通常、商品商標に対しての商標的使用に該当しない。例えば、スターバックスが珈琲店経営のサービスの中で、スタッフの制服にやコーヒー用品等の物に、“Starbucks”の商標を使用することは、「Starbucks」の役務商標の商標的使用と認定されるべく、服装、コーヒー用品に対する商品商標の商標的使用ではない。もし、スターバックスが別途に単独販売するマグカップに“Starbucks”の商標を使用する場合、この使用は“Starbucks”の商品商標の商標的使用と認定すべく、役務商標の商標的使用ではない。

第九条  同一商品とは、被疑侵害者が実際に生産・販売した商品の名称が、他人の登録商標の指定商品の名称と同一である商品、又は両者の商品の名称は異なるものの機能、用途、主要原料、生産部門、消費対象、販売ルート等の点において同一又はほぼ同一であり、関連公衆が通常、同一の商品として認識するものを指す。
 同一サービスとは、被疑侵害者が実際に提供したサービスの名称が、他人の登録商標の指定サービスの名称と同一であるサービス、又は両者のサービスの名称は異なるもののサービスの目的、内容、方式、提供者、対象、場所等の点において同一又はほぼ同一であり、関連公衆が通常、同一のサービスとして認識するものを指す。
 指定商品又はサービスの名称とは、国家知識産権局が商標登録業務において商品又はサービスに使用する名称を指し、『類似商品・サービス区分表』(以下、「区分表」という)に記載された商品又はサービスの名称及び区分表に記載されていないが商標登録で受け入れられている商品又はサービスの名称を含む。
本条に対する理解:
 実務上、同一商品・同一サービスと認定されるには、2 つのパターンがある。一つ目のパターンは、権利者が指定した商品・サービスの名称が、本件に係る商品・サービスの名称と同一であり、同一商品・同一サービスと認定される場合である。例えば 、権利者が指定した商品と本件被疑商品は同じくモニターであるか、また権利者が指定したサービスの名称と本件に係るサービスの名称が同じく貨物運輸である場合。この場合の判断基準は、より客観的なもの、すなわち、区別表に定められた標準的な商品もしくはサービスの名称、または商標登録で受け入れられている商品もしくはサービスの名称に基づいて判断する。二つ目のパターンは、権利者の登録商標が指定した商品・サービスの名称が、本件に係る商品・サービスの名称と異なっていても、実際には同一の商品・サービスを指しており、略称や異名も含めて、同一の商品・サービスと見なすことができる場合である。 例えば、コンピュータとパソコンは同じ種類の商品に属するし、理髪と美容は同じ種類のサービスに属する。 このような場合の判断には、区分表に示された客観的な基準に加え、関連する公衆の一般的な認識も考慮されるべきである。 関連する公衆には、商標が示す商品又はサービスの消費者、前述の商品を生産する又はサービスを提供する他の事業者、並びに販売者及び流通経路に関与する関係者が含まれる。
(出典)「『商標権侵害の判断基準』に対する理解と適用」の全文は、CNIPA の公式サイトで掲載

本文は こちら (路浩知財ニュースレター7-8月号)