2022-12-08

工藤莞司の注目裁判:12類に係る出願商標「MIRAI」について商標法4条1項15号該当とした審決が支持された事例

(令和4年11月21日 知財高裁令和4年(行ケ)第10033号「MIRAI」事件)

 事案の概要 原告(審判請求人・出願人)は、平成27年9月24日、「MIRAI」を標準文字で表した本願商標について、12類「船舶、船舶の部品及び附属品、航空機、航空機の部品及び附属品、鉄道車両、鉄道車 両の部品及び附属品、自動車、自動車の部品及び附属品、二輪自動車、二輪自動車の部品及び附属品」を指定商品とした登録出願(商願2015-92058)をした処、拒絶理由通知を受け、意見書を提出とともに、補正書により指定商品を「航空機、航空機の部品及び附属品、鉄道車両、鉄道車両の部品及び附属品」と補正したが拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判(2019-60)を請求したが、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対しその取消しを求めて提訴した事案である。拒絶理由は、燃料電池車に使用する商標(右上掲図参照)を引用して商標法4条1項15号に該当するとしたものである。

 判 旨 混同のおそれについて 以上・・・認定したとおり、引用商標は、本願商標の出願日である平成27年9月24日には、本願商標の指定商品の取引者及び需要者並びに自動車の取引者及び需要者の間で、トヨタ社の取扱いに係る燃料電池車を表示するものとして周知著名であり、現在に至っていること、本願商標と引用商標は類似し、その類似性の程度は高いことからすると、本願商標は、原告がその指定商品について使用した場合、取引者、需要者をして、引用商標を連想又は想起させ、その商品がトヨタ社あるいは同社と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきで、本願商標が商標法4条1項15号に該当するとした本件審決の判断に誤りはない。
 分割出願について 本件においては、本願の登録出願時はもとより現在に至るまで、原登録出願について、本願に係る指定商品を削除する補正がされたとは認められず、商標法施行規則22条2項の要件を欠くばかりか、もとの登録出願の指定商品等を2以上に分けるという分割の前提をも欠く。そうすると、本願の登録出願は、商標法10条1項規定の登録出願の要件を満たさないから、分割出願として不適法であり、同条2項規定の出願日遡及の効果は生じない。

 コメント 本件判決は、商標法4条1項15号事案で、レール・デュタン判例(最高裁平成10年(行ヒ)第85号 平成12年7月11日)に従い認定、判断し出所の混同の虞を認めたもので、審決と同旨である。引用商標の周知・著名性については、被告・特許庁側が新聞記事を提出して立証している。商標法4条1項15号事案では、異議申立てや無効審判請求が多い中で、本件は、審査、審判も職権審査事案である。
なお、本願は分割出願の形をしているが、もとの出願の指定商品について補正がなかったため、出願日の遡及は認められなかった。