ラオス知的財産局(DIP)は、2022年9月29日付で先行商標と類似することを理由に2件の商標登録を取り消した。DIPの担当者は、この決定はラオスで初めてのものであり、法律の規定を実際に運用する前向きな一歩であることを非公式に確認した。
背景
ラオスでは、出願件数が比較的少なく、実体審査が近年になってようやく行われるようになったため、登録商標の取消手続は一般的ではない。知的財産法(2017年11月15日第38/NA号)により、商標が登録を受けるべきでないことを立証できる場合には、第三者が登録商標の取消を申請できるようになったが、従来は取消決定がどのように取り扱われるのかについての前例がなかった。
知的財産法では、登録完了後,第三者は公報への公告日から5年の期間内に登録に対して異議の申立て又は取消を請求することができるとされている。しかし、公報へ掲載されるようになったのが2019年6月であるため、それ以前に商標登録された場合の5年間をどのように計算するのかが不明であった。このことから、ラオスにおける商標取消の5年の法定期限が2024年6月以降のみ有効となる可能性もあり、実務上どのように適用されるかは未知数である。
本件について
本件は、サイアムクボタ社(Siam Kubota Corporation Co Ltd)が、自社の先行商標と類似する2つの商標に対して取消請求を提起したことから始まった(図1参照)。
サイアムクボタ社は、2009年に第12類の商品を指定して商標登録を行い、ラオス国内において広く使用し保護してきた。
今回、サイアムクボタ社は、同じく第12類の商品を指定して登録された類似商標2件(図2参照)について、登録の取消を求める申立てを行った。
サイアムクボタ社は、東南アジア市場全体で長年にわたりトラクターを販売している有名企業であり、両者の商標は本質的な要素が共通しており、類似商標の出願人はサイアムクボタ社の商標を模倣し消費者に連想させようとしていることが示唆された。さらに、これらの商標で販売される商品は、トラクターを使用または購入する消費者を対象にしているため、商品の出所について市場で混同が生じるおそれが相当程度あり、高い可能性があるとされた。
サイアムクボタ社は、取消請求のサポートとして、出願人がサイアムクボタ社の商標の評判にただ乗りしようと悪意を持っていたことを立証するために、実際の使用証拠を提出した。また、商品の販売、広告、宣伝に関連する使用証拠もDIPの検討資料として提出した。
DIPは、両社の商標の全体的な表現、デザイン、称呼及び指定商品を評価し、両社の商標は混同するほど類似すると判断して対象商標の登録を取消した。
コメント
この決定はラオスで初めてのものであるが、ラオスにおける商標の取消手続きに重要な進展をもたらすものであり、異議申立などの他の対審手続きにも弾みをつけることが期待される。また、より広い意味では、この決定は、この分野における法律と実務の整合性を示すもので、商標権のより効果的な保護につながるものになるはずである。
本文は こちら (Lao Department of Intellectual Property Issues Country’s First Trademark Cancellation Decision)https://www.tilleke.com/insights/lao-department-of-intellectual-property-issues-countrys-first-trademark-cancellation-decision/