2023-01-26

EU:古い商標の指定商品・サービスと使用証明に関する判例と留意点 - Marks & Clerk

EU一般裁判所は、最近、登録商標が保護を確実に受けられるように、指定商品・サービスを見直す必要性についての注意喚起となる判決を下した。

事件の背景
Case T-12/22は、ポーランドのHasco社(Hasco TM sp. Z o.o. sp.k)が、ポーランド国内で登録した商標「NATURKAPS」を理由に、Esi社(Esi s.r.l.)がEUIPOに出願した商標「NATURCAPS」の登録を無効とするよう求めたものだ。

Hasco社のポーランド商標は、第5類の「医薬品(pharmaceutical products)」を指定して2000年11月に出願されたものだが、Esi社のEU商標は、栄養補助食品、サプリメント、医療用薬草(dietary, nutritional and food supplements and medicinal herbs)を含む第5類の広範な商品を指定して2017年1月に出願された。

取消手続き中、Esi社はHasco社のポーランド商標の使用証拠を要求し、Hasco社は提供した。しかし、Hasco社が提出した使用証拠は、「NATURKAPS」商標が指定している「医薬品」ではなく「栄養補助食品(food supplements)」に関するものであった。その結果、EUIPOの取消部門は、指定商品に関する登録商標の使用を証明するものではなく、Hasco社は「NATURKAPS」商標の使用証拠を提供していないと判断して取消請求を棄却した。
Hasco社はこの決定を不服として審判請求した。Hasco社は、商標が出願された2000年当時、ポーランドでは「栄養補助食品」は認知されておらず、ニース分類の中にこの用語は存在していなかったとし、2000年当時の医薬品の定義に関するポーランド国内法への言及を含め、「栄養補助食品」が「医薬品」に合理的に包含される理由について主張を展開した。 

審判では、「医薬品」と「栄養補助食品」は異なるという取消部の判断が支持された。特に、Hasco社の請求が行われた時点で「食餌療法用食品・飲料・薬剤(dietetic substances adapted for medical use)」がニース分類の一部を構成しており、「栄養補助食品」を含むこの種の商品は医薬品と区別されると指摘された。 

Hasco社はEU一般裁判所に控訴した。一般裁判所は、「医薬品」は医薬品と栄養補助食品の両方を含む総称であり、これらの商品はすべて健康増進を目的としているため、Hasco社の主張には根拠がないとの判断を示した。一般裁判所は、こうした評価は混同のおそれの認定には関係するかもしれないが、指定商品に関する商標の真正な使用を評価する際には関係ないと指摘し、全体としてHasco社の登録商標「NATURKAPS」が指定する商品を真正に使用している証拠を提供していないとする審決を支持した。

コメント
これはHasco社にとって悔しい結果となった。「NATURKAPS」商標の真正な使用を示すことはできたもの、その使用が商標の指定する商品ではないとされ、登録商標に依拠することはできず、その結果、類似する商標の登録を取消すことができなかった。

この事例から得られる重要なポイントは、古い商標に依拠して真正な使用を証明する場合、その商標が指定する商品・サービスに対して実際の使用がまだ有効で適用可能であることを確認しなければならないという警告も含まれているということだ。そうでなければ、商標権者は真正な使用を立証できず、最終的に未登録の権利に頼らざるを得なくなるおそれがある。

既存の商標権、特に 5 年以上前の商標権については、指定範囲が適切かどうかを確認する必要がある。登録商標による保護が不十分または不確実な場合、必要な保護レベルを提供するために、再出願を行うことが適切な場合もある

本文は こちら (Recent trade mark decision: NATURKAPS)