2023-02-28

中国:CNIPAの「『商標権侵害の判断基準』に対する理解と適用(24条、26条、27条)」 - 北京路浩

 2022年8月12日に、国家知識産権局(CNIPA)が、「『商標権侵害の判断基準』に対する理解と適用」を発表した。2020年6月15日、 国家知識産権局(CNIPA)は「商標権侵害の判断基準」を制定し、公布した。商標権に関する法執行の業務指導をさらに促進し、基準の普及と解釈をさらに改善し、法執行者が規定の意味を正確に理解し、各地での実施過程における基準の適用に関する質問を迅速に答えるため、国家知識産権局(CNIPA)は、「『商標権侵害の判断基準』に対する理解と適用」を作成した。当文書は、計38 条からなる「商標権侵害の判断基準」を逐条解釈した上、各条文に関連する典型的な判例も紹介した。本稿は、「『商標権侵害の判断基準』に対する理解と適用」の重要な内容を取り上げ、抄訳の上、連載を行う。

第二十四条 色彩を指定しない登録商標は、自由に色彩を付けることができるが、便乗の目的で色彩を付け、他人の同一もしくは類似の商品又は役務においての登録商標と類似し、混同を生じるおそれがある場合、商標法第五十七条第二項に規定する商標権侵害に該当する。
 登録商標の知名度が高く、被疑侵害者が登録商標の権利者と同業であるか、または権利者の業界と関係性の大きい業界にいる場合、登録商標と同一または類似の標章を使用するについて、正当な理由がない場合、便乗の意図があるとみなされる。

本条に対する解説:被疑侵害者が便乗の意図を有すると認定されるには、3つの要件を満たす必要がある。第一に、便乗された登録商標の知名度が比較的に高いこと。第二に、被疑侵害者と登録商標の権利者が同じ業界、または関連性の高い業界にいることである。関連性が高いとは、両者が使用する商品またはサービスの消費者、生産者、事業者が比較的に大きな程度に重なり合うこと。第三に、正当な理由なく登録商標と同一または類似の標章を使用すること。正当な理由のある使用は、例えば、登録商標に含まれる「商品の普通名称」、「図形」、「品番」を使用するなど。

第二十六条 経営者が商品を販売する際に、登録商標の専用権を侵害する商品を景品として贈呈することは、商標法第五十七条第三項に規定する商標権侵害に該当する。

本条に対する解説:事業者が商品を販売する際に贈呈した景品は、名目上は無償であるが、消費者は販売された商品を購入してから初めて獲得できるものであるため、景品を贈呈することは、販売行為の一部となる。従って、景品を贈呈することは、営利を目的とし、事業者に利益をもたらし得る行為であり、その本質は、商品の売買関係である。
 実務上、抽選というマーケティング手法がある。すなわち、景品つきのプロモーションイベントにおいて、抽選や宝くじなどの偶然性を有する方法で当選者や景品のレベルを決定すること。抽選の景品が登録商標の専用権を侵害する場合にも、本条の規定を参照して適用することができる。

第二十七条 次に掲げる状況のいずれかに該当する場合は、 商標法第六十条第二項に規定の「登録商標の専用権を侵害する商品を知らないうちに販売すること」に該当しないとする。
(一) 仕入のルートが商慣習に合致せず、価格が市場の相場より明らかに低い場合。
(二) 帳簿や販売記録などの会計書類の提出を拒み、または会計書類を偽造すること。
(三) 違法行為が発覚された後に物証を移転・毀損し、または虚偽の証明書もしくは虚偽の情報を提供すること。
(四) 類似した状況の下で処分を受けた後、再犯する場合。
(五) その他、当事者がすでに知ったまたは知るべきであったとみなされる状況。

本条に対する解説:2013年の第3回商標法改正の際に、販売者の免責条項が導入された。 商標法第六十条第二項の規定によると、「侵害品であることを知らずに販売した者は、当該商品が合法的に入手したものであることを証明し、提供者を提示することができる場合、工商行政管理部門は販売者に対して商品の販売停止を命じることができる。」
 商標法によれば、販売者の責任免除は以下の3つの要件を満たすことが必要である。 第一に、販売した商品が登録商標の専用権を侵害することを知らないこと。第二に、販売者は商品が合法的に取得したことを証明できること。第三に、販売者が商品の提供者を提示できること。
 販売者が「実際知らないし、知るべきでない」と判断する方法は、事件の具体的状況、客観的事実および関連する証拠に基づき、以下の要素を総合的に考慮し認定すべきである。
 第一に、販売者は類似商品の市場価格よりも著しく低い商品に対し、より高い精査義務を担うべきである。仕入れた商品の価格が、純正品の市場価格と著しく異なる場合、例えば、同一商品の市場価格をはるかに下回る場合、一般的に、販売者は合理的な審査義務を果たせなかったと認定できる。販売者の仕入れルートは合法的でなければならない。すなわち、販売者は仕入れルートを決定する際に、供給者の供給資格を確認すべきであり、出処不明な供給は、「販売者は知らない」という状況に該当しない。
 第二に、食品、医薬品、健康食品、花火・爆竹、化学薬品、アルコールなどの商品は、国民の生命と安全に関わるものであるため、生産、輸送、流通の各分野で相応な特別規定を設けることになる。販売者が関連規制に反して、合理的な精査義務を果たさない場合、「販売者は知らない」の要件を満たさない。
 第三に、著名商標であればあるほど、販売者が商品と商標を知る可能性が高くなり、その精査義務も高くなる。
 第四に、規模が大きく、経済的に強く、経営の歴史が長く、法人格を持つ販売者ほど、仕入れた商品が他人の登録商標の専用権を侵害する可能性を判断するのに、優位を持って、リソースがあり、能力が高いため、より高い精査義務を担う。例えば、総代理店及び上位な代理店は、小売りの販売者よりも、より高い精査義務を担うべきである。
 第五に、法執行機関の捜査の際に、販売者が協力を拒み、被疑侵害品および関連証拠を隠ぺいまたは移転し、さらには捜査に抵抗したり、暴力を持って抗争したりする場合は、「販売者は知らない」という状況に該当しない。
 第六に、その他の要素:販売者が権利者と類似の紛争について民事訴訟を行っており、裁判所から商標権侵害と認定されたことがあるか、または関連行政執行当局から同一商品の販売について捜査・処分を受けたことがあるか、販売者が関連ブランドの代理店であったか、販売者または関連利害関係者が同一または類似商標の登録を出願したが法律により拒絶されたか、総代理店または上位代理店の販売行為が司法または行政当局により侵害と認定されたか等。
 「合法的な入手」という要件に関しては、販売者は通常、販売した侵害品が合法的な入手であることを証明するために、価値付加税のインボイス、仕入れのインボイス、仕入れの契約、販売リスト、受領リスト、支払伝票、供給者などの証拠を提供すべきである。
 「供給者の提示」とは、商品の供給者の氏名、住所、またはその他の手がかりを記載し、確認できるものを提示すること。

本文は こちら (路浩知財ニュースレター2023年1-2月号)