2023-02-08

EU:情報としての他人の商標の使用はどこまで許容されるか? - Novagraaf

 商品の特徴や目的や機能を説明しようとする場合、他人の商標を参照することがある。例えば、スーパーマーケットの自社ブランドのコーヒーカプセルは、「ネスプレッソマシンと互換性がある」と表示するときなどだ。しかし、商標の情報的使用と商標権侵害の間には微妙な境界線が存在すると、Noa Rubinghは解説する。

 商標の主な機能として商品(またはサービス)の出所表示がある。では、なぜブランドオーナーは、他のブランドオーナーの商標を自社の商品に付すことがあるのだろうか。企業は、自社商品の特徴を説明したり、その目的や機能を示したりするために、第三者の商標を参照することがある。例えば、ネスプレッソのコーヒーメーカーと互換性のあるコーヒーカプセルの製造企業のように、自社商品が他社商品と互換性があることを示したい場合などだ。このような商標の使用は、「情報的使用(Informative use)」と呼ばれ、商標の効力の制限としてEU商標法第14条第1項(c)と第14条第2項に規定されている。

情報的使用:必要性と公平性
 EU法における商標の情報的使用の出発点は、2005年にEU司法裁判所(CJEU)が下した判決、Gillette/LA Laboratories事件にある。簡単に説明すると、CJEUはこの事件で、商標権者ではない第三者による商標の使用は「必要な場合」に認められるという判決を下している。「必要な場合」とは、商品の目的を公衆に適切に知らせる唯一の手段である場合などのことを意味する。つまり、コーヒーカップのパッケージに、ネスプレッソのコーヒーマシンで使用できることが記載されていなければ、消費者はその商品がどのように使用できるのかを知ることができないことになる。

 しかし、他人の商標の情報的使用は、公正に行われなければならず、EUの判例法も、何が「公正」とみなされるかについてのガイダンスを提供している。

 すなわち、以下のような使い方はしてはならない;
* 自社商品と他社商標との間に商業的な関連性があるとの印象を与える
* 他社商標の特徴や名声を不当に利用するもの
* 他社商標の著名性にダメージを与える
* 自社商品を他社商標の模倣品または偽造品として提示する

実践的な解決策:商標権者によるガイドライン
 実務上、何がフェアユースとなり、何がフェアユースでないかを判断するのは難しい場合がある。現実的な解決策として、一部の商標権者は独自のガイドラインを作成し、商標権者の公認再販業者やライセンシーではない第三者が、自社商標を使用してよいことと悪いことを明確に定義している。

 例えば、ある商標権者のガイドラインには、第三者が商品(ヘッドフォン、携帯電話の充電器、コーヒーカップやパッドなど)が商標権者の商品と互換性があることを示すために、純粋に記述的な文脈で商標を使用することを許容すると判断できるものがあるほか、ガイドラインで、マーケティング資料などにおける図形商標の配置などで、何が許されないかについて明確に指示するものもある。このようなガイドラインは、フェアユースに関する判例法とも一致しているように思われる。

 したがって、情報的使用に基づいて他社の商標を使用したい場合、当該商標の所有者がフェアユースに関する独自のガイドラインを作成しているかどうかを確認することを勧めている。また同様に、自社の商標を使用させる場合にも、同様のガイドラインを作成することが賢明だろう。

情報としての商標使用はさりげなく
 商標の情報的使用はさりげない方法で行う必要がある。つまり、次のようなことだ。

* 使用する商標はパッケージや商品自体で目立ちすぎないようにする
* パッケージにはブランドのロゴを(原則として)使用しない
* パッケージは異なるレイアウト/「外観と雰囲気」とする

 一線を越えないようにするためには、より一般的な文言を使用することが良い解決策となる場合もある。例えば、ライバル会社のコーヒーメーカーは、自社の商品が「他社ブランドのコーヒーメーカーとも互換性がある」などと記載することもありだ。

本文は こちら (Informative use: Necessity or trademark infringement?)