週末、ドイツで起きたこの事件に目が留まった。イースターで卵をたくさん食べた人は、この先を読むのをためらうかもしれないが、この事件はお菓子(あるいはウサギ)についてのものではなく、「アドヴォカート(advocaat:オランダ語で弁護士の意味を持つリキュールのこと)」という名前で知られている商品についてだ。
イースターよりもクリスマスに飲むイメージが強いかもしれないが、アドヴォカートは卵、砂糖、ブランデーから作られるアルコール飲料で、スノーボールというカクテルの主成分だ。ドイツ語では「Eilikör」つまり「卵のリキュール」と呼ばれている。ヴェアポーテンはドイツでアドヴォカートを販売する老舗のエッグリキュール専門メーカーで、古くは1966年に「Ei, Ei, Ei – VERPOORTEN(Eiはドイツ語で「卵」)」という商標をドイツで登録している。1979年には「Eieiei」という商標を登録した。「Ei」は英語の「eye」と同じ発音で、「ei ei ei」は驚きの効果を持つ表現であり、ザ・シンプソンズに登場するバート・シンプソンの「¡Ay, Caramba!(アイカランバ!(スペイン語でいうOh my GOD!))」を思い浮かべると分かりやすい。
アドヴォカートの販売で競合するノルディック(Nordik)が「Ei, Ei, Ei, Ei, Ei」というスローガンを掲げてアドヴォカートの5種フレーバー・セットを発売したとき、ヴェアポーテンはそれを不満として、デュッセルドルフの裁判所に提訴した。ヴェアポーテンの商標は長い間、広範囲に使用されていたが、裁判所は、ヴェアポーテンの商標とノルディックのブランドとの間には十分な相違点があるとの判断を下した。「Ei」つまり「卵」は商品を明らかに記述的に示したものなので、ヴェアポーテンに競合他社が使用を禁止する権利はないというものであった。
「Ei」が記述的であるとすると、なぜヴェアポーテンは「EiEiEi」を卵ベースの商品に商標として登録できたのだろうか。それは、登録商標にヴェアポーテンの社名が含まれており、全体として十分に識別力があるからだと思われる。ドイツの弁護士ではないが、12年後に出願された「Eieiei」商標は、おそらく登録に値するだけの言葉遊びがあったものと推測する。
報道によると、ノルディックは2020年に「Ei, Ei, Ei, Ei, Ei」商標を出願したがドイツの知的財産局から「記述的で識別力がない」と指摘され登録が拒絶された。もしかしたら、ノルディックは、この標章を使用することにお墨付きを得るために、拒絶されることを想定して敢えて出願したのかもしれない。いずれにせよ、今となっては、結果は…良いもの(eggscellent)であったとノルディックは考えているに違いないと思うのだが。