2023-04-20

中国:製造中止になった商品を模倣して権利侵害になったケース - Marks & Clerk

Nokia Corporation(以下、ノキア)と深圳市诺亚信高科技集团有限公司(Shenzhen Noain High-Tech Group Co. :以下、Noain)との商標権侵害と不正競争行為に関する訴訟において、広東高級人民法院は商標権侵害に関する一審の判断を支持すると共に、Noainが「NOAIN 5310i」という名称の携帯電話を製造、販売したことが不正競争行為に当たると認定した。ノキアは300万人民元の損害賠償を勝ち取った。

ノキアは、中国で9類の携帯電話を指定して以下の商標を登録している;

ノキアは、「Nokia 5310」携帯電話に「NOKIA」商標を付して使用している。この携帯電話には、画面の両側に特徴的な色(赤または青)の縦じまがある。スクリーンのすぐ下には丸みを帯びた四角い矢印キーを中央にして4つのファンクションキーがあり、その下にはT9キーがある。ノキア製携帯電話とNoain製携帯電話の写真を以下に掲載する;

Noainは、中国において商標「NOAIN(番号11535129、11535098、6199979)」と商標「诺亚信(中国語でNOAIN:番号6211776)」を第9類で登録していたが、以下のロゴを使用したことにより商標権侵害で訴えられた;

ノキアは、2007年9月に携帯電話モデル「Nokia 5310」について2013年9月まで有効なネットワークアクセスライセンスを取得した。一方NOAINは、2016年9月に携帯電話「NOAIN 5310i」について2019年9月5日まで有効なネットワークアクセスライセンスを取得した。

裁判で広東高級人民法院は、主に2つの問題に焦点を当てた;
1. Noainの行為は商標権侵害を構成するか
2. Noainの行為は不正競争を構成するか

1. Noainの行為は商標権侵害にあたるか
高級人民法院は、ノキアの商標(番号297227、5648806、G1298220)は 1987年に初めて出願され、商標「NOKIA」および「诺基亚(中国語で Nokia)」は広範に使用・宣伝されてきたと認めた。登録商標の「NOKIA(番号297227)」は、以前「著名商標」として認められていた。

ノキアの商標が広く知られていたにもかかわらず、Noainは自社の携帯電話にノキアの商標(上記参照)に類似したスタイルと方法を使用し公衆を混同させる虞があった。高級人民法院は、「NOAIN」が商標登録されていたが、ノキアには、ノキアの著名な商標を模倣して公衆を惑わすような方法でNoainが後に登録した商標を使用することを禁止する民事救済を求める権利があるとの判断を示した。 

2. Noainの行為は不正競争にあたるか
ノキアの「Nokia 5310」という製品は、訴訟の時点では製造中止になっていたが、ノキアとの関係を示す強い特徴を有しており、比較的短期間で同製品に対する認知や市場における影響力が失われることはないとし、さらに、「NOKIA」商標は「著名」であると認識されていたと高級人民法院は判断した。

Noainの携帯電話「NOAIN 5310i」は、ノキアの携帯電話「Nokia 5310」シリーズと名称及びデザイン・装飾の面で酷似していた。Noainは、ノキアの製品とその著名性を知っており、同様の名称とデザイン・装飾を施した「NOAIN 5310i」携帯電話を製造した。高級人民法院は、ノキアの人気を利用して不当かつ不公平な取引を行おうとしたことが明らかであると判断した。

高級人民法院は、これらを考慮しNoainに対して300万人民元の損害賠償を命じた。

この事件の興味深い点は、市場から退場した商品であっても、十分に識別力と人気があれば権利保護される可能性があるということだ。このことは、権利者が反不正競争法に基づく適切な救済を求めることに積極的になることを促すだけでなく、侵害しようとする者にとっても良い警告となった。

本文は こちら (Case study: Copying discontinued products may still constitute unfair competition)