2023-07-20

メタの「Threads」はまずジャマイカに商標出願、なぜジャマイカなのか? ― Marks & Clerk

 商標の観点から、新しいブランドの立ち上げや商標登録のタイミングと戦略には興味をそそられることが多い。現在進行中のイーロン・マスク氏とマーク・ザッカーバーグ氏の争いをきっかけにSNSの商標保護について調べてみた。

 米国のメタが2023年7月6日にリリースしたSNS「Threads(スレッズ)」は、現在インスタグラム(Instagram)と連携しており、メタはすでにInstagram LLCの名前で「Threads」ロゴの商標登録を申請している。ブランド・オーナーが新規にブランドを立ち上げる際に、ある程度の秘密性を求める場合、まずジャマイカで商標登録出願するという戦術がある。なぜか?なぜなら、ジャマイカは新規商標出願の詳細を即座に公表しないため、新しいブランドや代替/バックアップブランドを短期的に世間の目に触れさせないようにするためだ。その後、数日、数週間、数ヶ月の間に海外出願が行われ、最初のジャマイカ出願からの優先権を主張する(最初の6ヶ月以内に行われれば、海外商標は最初の出願日に遡及する)。Threadsのロゴは、7月10日に米国で4つの異なる商標出願が行われ、いずれも6月30日に出願されたジャマイカの商標からの優先権を主張している。

 不思議なことに、「THREADS」という文字商標の出願は見つからなかった。もしかしたら、ジャマイカの商標登録簿に、海外での出願を待つ優先権出願がひっそりと記録されているかもしれない。それらも6月30日に出願されていたと仮定すると、インスタグラム/メタは12月30日までに出願すれば権利を失うことはない。 

 ツイッターのユーザーならわかるだろうが、「THREADS」とはリンクされた一連のツイートのことで、ユーザーは長いストーリーを語ったり、読みやすいようにツイートをまとめたりすることができる。問題は、「THREADS」が、この種のリンク投稿を可能にするSNSとしては記述的な商標であることは間違いなく、SNSを指定した商標登録が難しくなることである。あるデータベースで検索すると、ジャマイカでは2020年に公告された「(ツイッター社の)THREADS」商標の方が先行している。おそらく登録可能性への懸念から、当時は他の国でこれらの商標登録を追求しなかったのだろう。

 メタが「THREADS」という名称を選んだのは、おそらく、実際に登録された権利を侵害することなく、ツイッター社をさらに困らせるために考えたものだろう。将来のある時点で(ツイッターの消滅後か)、ネットワークの名称がより識別力を持ち商標登録で独占しやすいものに変更されても驚かない。ジャマイカの商標登録簿に新たに登録されたものを見ることができるかもしれない。
(Alison Melling)

本文は こちら (Threads and the Jamaica strategy – why file there?)