2023-07-20

工藤莞司の注目裁判:本願商標について要部観察が認められた事例

(令和5年6月22日 知財高裁令和5年(行ケ)第10017号 「REIGN事件」)

事案の概要

 原告(請求人・出願人)は、本願商標(左傾図参照)、 指定商品25類「被服、トップス、ワイシャツ類、ティーシャツ、・・・靴下、履物、ガーター、靴下 留め、ズボンつり、バンド、ベルト、仮装用衣服、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」28類「ワークアウト用手袋」(補正後のもの)について、登録出願をしたが拒絶査定を受け拒絶査定不服審判(2022-2303)の請求をした処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めた事案である。拒絶理由は商標法4条1項11号該当で、商標(下掲図・登録第5589978号)、指定商品25類「被服、帽子」が引用商標である。

判 旨 本願商標の全体を観察すると、図形部分と文字部分はそれぞれの形態が明瞭に異なるとともに、・・・そして、本願商標の図形部分は、本願商標において強く支配的な印象を与える部分といえる。また、文字部分は、「REIGN」の文字部分(一段目)と「TOTAL BODY FUEL」の文字部分(二段目)の文字の大きさやフォントが明らかに異なるために、視覚的に独立した印象を与えるとともに、「REIGN」の文字部分が他の文字部分に比して著しく太いフォントで大きく表されていることから、「REIGN」の文字部分もまた、強く支配的な印象を与える部分といえる。各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとは認められないから、文字部分のうち強く支配的な印象を与える「REIGN」の部分を抽出し、当該部分(「本願要部」)だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも 許されるというべきである。
 本願要部「REIGN」の文字部分と引用商標とを比較すると、・・・本願要部と引用商標は、文字列が同一であること、引用商標の3文字目 のデザイン化の程度が著しいとはいえず、欧文字の「I」に近いことを考慮すると、・・・外観において近似しているというべきである。そして、本願要部と引用商標は、外観において近似しており、また、称呼及び観念を共通にし、同一又は類似の商品又は役務について使用するときは、その商品又は役務の出所について誤認混同が生じるおそれがあるというべきで、互いに類似する。

コメント 本件事案においては、本願商標の要部観察の是非が争われて、本願商標中の「REIGN」も支配的部分として、引用商標と類似と判断されたもので、審決と同旨である。裁判所は、引用商標についても、乙号証から「I」又は「i」に代えて、「!」又は「!」の文字をデザイン化して用いる手法が一般的として、取引者、需要者は、「!」又は「!」の文字をデザイン化したものをもって、「I」又は「i」と読むと認識、理解すると認めるのが相当として、引用商標は「REIGN」として、類似の判断に至っている。そして、称呼、観念の類似に加えて、外観も近似と判断している点も、審決と同旨である。