世界知的所有権機関(WIPO)は、商標を「商標は自己の商品又はサービスと他人の商品又はサービスとを識別することを可能にする標識」と定義している。商標は、文字(または文字の組み合わせ)であったり、ロゴ(リンゴをモチーフにしたアップル社のような)であったり、形状(コカ・コーラのボトルのような)であったり、音(携帯電話の着信音のような)であったりする。しかし、商標保護といえば、小売、スポーツ、消費財、エンターテイメントといった分野のビッグブランドを連想する人が多いだろうし、ハイテク企業ですぐ思い浮かぶブランドといえば、アップル社やマイクロソフト社などのエンド・ユーザーの多くいる多国籍企業だろう。
その結果、利用可能な知的財産権全般を検討しても、特に特許の可能性にばかり注目していると、技術系スタートアップ企業は商標を見過ごすか、その決定と出費は資金が出来るまで先延ばしにできると判断しがちであることがしばしば見受けられる。
結局のところ、例えばライフサイエンスの新興企業が低分子化合物を発明し、それが数年後にジョンソン・エンド・ジョンソンのブランドで販売される錠剤になるかもしれないとしても、誰が新興企業のブランドを気にするのだろうか。
しかし、このような考えは近視眼的になりかねない。その新興企業は、知名度が上がり、ブランドの保護が重要になるまでに成長するかもしれない。
アプリを開発するビジネスがそうであるように、初日から顧客と向き合うことになるかもしれない。少なくとも、自社の名前やロゴが他人の商標を侵害していないことを確認する必要がある。特許と同様に、登録商標も企業の簿価を高める可能性のある資産であり、投資や売買の際に有利に働く。
もちろん、ケンブリッジを象徴するもので最も古い(そしておそらく今でも一番の)お宝は大学である。その傘下には多数のカレッジがあり、アングリア・ラスキン大学(Anglia Ruskin University)や多数のアカデミック・スクール、語学学校があることも忘れてはならない。
これらすべての組織にとって、商標保護と綿密なブランド戦略は極めて重要だ。
実際、オックスフォードやケンブリッジのような大学のある町では、その町の名称に十分な名声があることが何度か立証されており、教育分野における他の機関によるその名称の使用や登録を阻止することができている。
また、老舗の大学や教育機関が、自分たちの名前や校章が、海外であまり評判の良くないアカデミーやサマースクールに無断で使用されていることに気づき、それが自分たちと関係があるものだと広く一般に誤解されて損害を被る前に、その学校を閉鎖させる必要がある場合にも、商標は非常に有効であることが証明されている。
ブランドの便乗者が提供する教育の質が低ければ、そのダメージは壊滅的なものになりかねない。さらに、出版物や講座、教育メソッドを制作している教育機関は、そのブランドを全面に出すことで、パクられる可能性が低くなる。
そのため、自己のブランドを保護し、その価値を高めようとする新規事業については、商標弁護士に助言を求めるよう勧めたい。ケンブリッジには有名ブランドが数多くあり、その中には長い歴史を持つものもある。結局のところ、使用し続け更新費用を支払っている限り、登録商標は永遠に続く唯一の知的財産保護形態なのだ。
本文は こちら(Cambridge: City of Innovation – Trademarking a city with complex legal and branding needs)