2023-08-10

工藤莞司の注目裁判:図案化に係る引用商標について構成文字、称呼認定が争われた事例

(令和5年7月6日 知財高裁令和5年(行ケ)第10010号 「リフナビ大阪事件」)

事案の概要 
 原告(請求人・出願人)は、本願商標「リフナビ大阪」、指定役務35類、44類について登録出願をしたが拒絶査定を受けて拒絶査定不服審判(2022-18074)の請求をした処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決取消しを求めて本件訴えを提起した事案である。拒絶理由は、商標法4条1項11号該当で、引用商標は右図のとおりで、指定役務の同一又は類似については争いがない。

判 旨 
 本願商標の構成中の「リフナビ」の文字部分は、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる一方、本願商標の構成中の「大阪」の文字部分からは、出所識別標識としての称呼及び観念が生じないから、本願商標については、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとは認められない。したがって、本願商標については、その構成中の「リフナビ」の文字部分を抽出し、商標の類否を判断することも許されるというべきで、本願商標の要部は、「リフナビ」の文字部分と認めるのが相当である。
 そして、引用商標の上側先頭左側部分は、そのとがった部分が略鉛直方向(引用者注・鉛直とは糸の先に重りを垂らしたときの糸の方向)を向き、真上から真下に向かって縦に下ろしたように配されており、片仮名「ソ」 の文字の左側部分ではなく、片仮名「リ」の文字の左側部分に近い形状をしていると認められることからすると、・・・ 引用商標の上側先頭部分は、片仮名の「リ」の文字を表すものと認識されると認めるのが相当である。したがって、引用商標の上側部分は、「リフナビ」の文字を表すと認識されるところ、当該部分は、引用商標において出所識別標識としての 機能を強く発揮すると認められるから、引用商標の要部は、「リフナビ」の文字部分であるといえる。
 以上によると、本願商標の要部と引用商標の要部は、いずれも特定の観念を生じさせるものではなく、その外観において類似し、その称呼において共通し、本願商標及び引用商標を同一又は類似の役務に使用するときは、役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるといえるから、本願商標と引用商標は、互いに類似すると認めるのが相当である。

コメント 
 本件では、本願商標、引用商標共に要部観察が肯定され類似商標と判断されて、審決が維持されたものである。本願商標「リフナビ大阪」中の「大阪」の扱いには異論はないだろう。また、引用商標は「リフナビ」の文字を表すものと認識されるとの認定についても、妥当であろう。知財高裁、審決共に、要部同士は、外観類似とも判断している。
 一時、一連一体等として構成を重視し、要部観察を回避したような類否判断が横行したが、最近は是正の動きが始まったと見受けられる。