立法院(国会に相当)が2023年5月9日付で可決した商標法一部条文改正案は、2023年5月24日に総統により公布され、その施行日は行政院(内閣に相当)によって定められる。今回の改正には、早期審査制度の導入、商標代理人管理制度の確立、権利侵害の疑いが生じない指示的合理使用(Nominative Fair Use)の明文化などが含まれる。しかし、異議申立手続の廃止、商標救済案件の審議に特化した独立機関の設立、商標案件の救済手続に関する改正案は、まだ立法院で可決されていない。改正案の主なポイントは、以下のとおりである。
一、商標登録出願の早期審査制度を導入(第19条、第94条、第104条)
商標登録の早期取得に対する台湾産業界のニーズに応えるため、商標登録出願について、出願人が早急に権利を取得する必要がある場合、事実と理由を明記し、早期審査請求料を納付すれば、商標主務官庁は早期に審査を行う旨の規定が新設されている。ただし、商標主務官庁が当該登録出願について補正又は拒絶理由を通知済みの場合、早期審査は適用されない。
二、出願人の資格を新設(第19条第3項、第99条)
市場における事業体の実際的なニーズに応えるため、パートナーシップ(例えば、弁護士事務所、建築士事務所)、法により設立された非法人団体(例えば、寺廟、協会、生産者組織)、法により登記された個人事業主又はパートナーシップ商号は、商標出願人となることができ、訴訟主体としての資格も取得できると明確に定められている。
三、特定の状況下で他人の商標を使用する場合、合理使用を主張できることを明確に定める(第36条)
他人の商標権の効力による拘束を受けない指示的合理使用を明確に定めている。例えば、携帯電話の修理サービスの提供を宣伝する広告看板は、各社の携帯電話の商標が、業者がサービスを提供する他者の携帯電話のブランドを表示するために使用される場合、権利侵害にあたらない。
四、商標権者が税関から通知を受けた際の侵害有無の認定手続の簡素化(第75条)
財政部関務署(日本の財務省関税局に相当)による水際保護措置作業手続の簡素化に合わせ、「税関に赴き」などの文言を削除し、商標権者はまず税関のプラットフォームで提供される画像ファイルを通じて判断し、必要であれば自ら税関に赴き侵害認定を行うことができるようにした。
五、商標代理人管理制度の確立及び既存の商標代理業務従事者の労働権益の保護(第6条、第12条、第109条の1)
商標専門能力を備える者が商標代理人として活動でき、商標代理業務を執行するには登録が必要であり、また、商標代理人の管理は、主務官庁が制定した弁法でこれを規範することとし、外部照会用のために商標代理人名簿を備え置く旨を明確に定めている。
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