(令和5年10月12日 知財高裁令和5年(行ケ)第10038号 「athlete Chiffon」事件)
事案の概要
原告(審判請求人・出願人)は、「athlete Chiffon」を標準文字で表した商標について、43類「飲食物の提供,宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」を指定役務として登録出願をしたが、拒絶査定を受け拒絶査定不服審判(2022-8603)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。拒絶理由は、商標法3条1項3号及び同4条1項16号該当である。
判 旨
各種ウェブサイトや新聞記事(証拠略)によれば、菓子やパン類を含む飲食物や、各種の商品又は役務について、運動選手向け商品又は役務の種類を表すものとして「アスリート」「athlete」を語頭に配した「アスリートケーキ」「アスリートパンケーキ」等の語が広く使用されている実情が認められる。そうすると、当該「アスリート」の部分は、後半に続く商品又は役務が「運動選手向け」を示すものとして、取引者、需要者に認識されるといえる。各種ウェブサイトや新聞記事(証拠略)によれば、シフォンケーキ専門飲食店や店舗の店名に「シフォン」「chiffon」が用いられていることが認められる。そうすると、「シフォン」「chiffon」の語頭に、提供対象や原材料、味を表す語が配された場合、語頭の部分は、後半に続く「シフォン(シフォンケーキの略称)」の種類、内容を表すものと容易に理解されるとみるのが相当である。
以上によれば、本願商標は、取引者、需要者に、「運動選手向けのシフォンケーキ」程度の意味合いを認識、理解させるから、 これをその指定役務中、「運動選手向けのシフォンケーキの提供」に使用しても、取引者、需要者に、運動選手向けのシフォンケーキであること、すなわち、役務の質(内容) を表示したものと認識させるにとどまり、役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といえるから、商標法3条1項3号に該当する。本願商標を指定役務中、「運動選手向けのシフォンケーキの提供」以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、本願商標は商標法4条1項16号に該当する。
コメント
本願商標「athlete Chiffon」は、「運動選手向けのシフォンケーキ」として提供役務の質(内容)表示として商標法3条1項3号に該当するとされた事例で、知財高裁でも、審決と同様な認定、判断となった。業界の使用例からの認定である。
菓子業界でも、多種多様な品種が開発されていることが窺われる。本件事案については、本願商標は、併せて4条1項16号該当ともされた。