2024年1月1日、英国で知財の送達用住所(IP Address for Service)に関する新しい規則が施行される。最近の知的財産専門家向け規制の変更に関してと、英国におけるCJEU(欧州司法裁判所)判例の優越性に伴い英国で活動する知的財産権者と商標専門家向けに、何が変わり何を意味するのかを、Luke Portnowが解説する。
規則に関する取り決めは、無味乾燥な題材となることが多いが、英国におけるこれらの変化には注意を払うべきである。規則の変更は、英国で規制を受ける専門家と仕事をすることの利点を高めることだけを目的としている。
規則の変更により、顧客管理ルールの適応、社内ポリシーおよびプロセスの大幅な見直し、コンフリクトチェックの強化、取引条件および契約書の修正が必要となり、場合によっては、顧客に新しい契約書に署名してもらう必要さえ生じる。
英国における知財の送達用住所
知的財産規制委員会 (IPReg)は、英国の弁理士と商標弁護士の規制機関だ。IPRegによる英国規制の変更に知財の送達用住所に関するものがある。
2024年1月1日以降、英国知的財産庁(UKIPO)における新規手続および同等の権利に関する登録変更には、英国、ジブラルタル、チャンネル諸島にある送達用住所が必要となる。
これまで(2021年1月1日以降)は、UKIPOに対する新規手続においてのみ、英国、ジブラルタル、チャンネル諸島の住所が必要だったのに対して、既存のEU商標および欧州共同体意匠の登録から作成された100万件のクローン商標・意匠には当初適用されなかった。そのためUKIPOは、外国に拠点を置く多くの代理人が、この制度を知らずに審判請求や異議申立を行っているのに配慮してきた。
2023年7月、英国のAI・知的財産担当大臣が英国公認商標代理人協会(CITMA)の「英国知的財産制度における規制対象外の代理人(Unregulated representatives in the UK Intellectual Property system)」に関する報告書に回答し、報告書で提起された問題をさらに調査するようUKIPOに指示したことが確認された。報告書では、「英国知的財産制度の利用者が、規制されていない代理人の存在により、より高いコスト、遅延、ビジネスの混乱に直面している」という指摘があった。
変更された規則は、これらの問題を解決し、知的財産権者の保護を強化し、一流サービスの提供を保証することを目的としている。
さらにUKIPOは、バーチャルオフィスや私書箱は、通知や書簡を物理的に受理できる場合にのみ有効とすることを確認した。この変更により、代理人が見せかけの英国の住所を使ってサービスを提供することを防ぐことができる。
規制の枠組み
IPRegの知的財産専門家に対する新しい規制は、「規制の枠組みと標準業務手順(Core Regulatory Framework and Standard Operating Procedure)」として、2023年7月に発効した。
これには、新たなIPReg行動規範、新たなCPD(継続職務研修:Continuing Professional Development)要件、顧客管理規則の変更、認可および専門家登録の変更、懲戒制度の改正(規制対象専門家の行動、義務および適正に対する監視の強化を含む)が含まれる。
これらの変更により、IPRegの規制下にある弁理士や商標弁護士を擁する英国の事務所は、顧客管理に関する規則、取引条件や契約書の文言を変更する必要があり、場合によっては、顧客に新たな契約書への署名を求める義務が生じる。
2024年
2024年は、英国にとって新しい知財の送達用住所規制(IPRegにおける規制される代理人に関する変更も同時に行われる)が始まる年というだけでなく、EU(CJEU)判例法の優越性の終了を告げる年でもある。
CITMAが提案したさらなる法改正が実施されるかどうかは、まだわからない。CITMAは報告書の中で、代理人には資格のある送達先住所だけでなく、英国の規制団体(CITMA、英国公認特許代理人協会、弁護士会などだがこれらに限らず)の会員か、問題の英国商標または登録意匠を保有する企業または企業グループの英国に拠点を置く従業員代理人である必要があるという法改正を提案している。
2024年は、英国の判例法および代理人の要件が発展する興味深い時期になるはずである。上記のような規制の変更は、英国の規制を受ける専門家と協働することの利点を高めるものでしかない。
本文は こちら (Important update on UK IP address for service regulatory rules)