2023年12月14日に、北京知識産権法院は、悪意ある商標登録規制10大典型案例を発表した。北京知識産権法院の担当事件の内の典型案例とはいえ、悪意ある商標登録を厳しく規制する方針の下では、十分参考価値はあると思われる。本稿は、今回公表された典型案例の判決要旨を簡単にまとめることにする。
1.短期間内に大量の商標登録出願は商標法第四条第1項違反になるか
【判決要旨】民事主体が商標登録出願するのに、真実な使用意図を持たなければならず、自らの需要を満たすことを目的としなければならない。商標登録出願の行為は、合理性と正当性を持つべきである。短期間内に複数の商品または区分に大量出願し、明らかに通常の生産経営の需要を超えて、かつ真実な使用意図またはその他の正当事由を立証できない場合、商標法第四条第1項が禁止する使用を目的としない商標登録出願に該当する。
2.商標法第十五条第2項違反の認定
【判決要旨】出願人の現法人代表または元法人代表、管理職などの職員が、他社に勤務した経歴があり、他社が先に使用していた商標を知りながらも、類似商品に類似商標を駆け抜け登録した場合、商標法第十五条第2項違反に認定すべきである。
3.地理的表示の不正使用
【判決要旨】出願人は地理的表示を含む商標登録出願する際に、指定する商品が地理的表示の保護商品の保護範囲に由来することを立証できない場合、当該商標は公衆を誤認させやすいと認定すべきである。
4.テレビ番組名などの先使用権
【判決要旨】テレビ番組なども、商品の性格を有し、一定の影響力を持つテレビ番組などは、反不正競争法第六条が規定する「一定の影響力を持つ商品名称」に該当し、商標法第三十二条が規定する「先行権利」の保護範囲となる。そのため、出願人は、同種類の商品または類似商品に、一定の影響力を持つ他人のテレビ番組名と同一または類似する商標を登録出願することは、出願人が先行権利の所有者と特定の関連性があることを関係公衆に誤認させやすいと判断されるべく、商標法第三十二条が禁止する「他人の先行権利を害する」行為に該当する。
5.公共の資源の不当占有
【判決要旨】商標法第四十四条第1項のいう「その他の不正な手段で登録されること」は、欺瞞の手段以外のその他の方法で商標出願登録の秩序を乱れ、公共の利益を損害し、公共の資源を不当に占有しまたは不当な利益を取得しようとすることを指す。出願人は、公共の事件に関する語彙、公共の文化資源の名称を商標として出願し、公共の資源を不当に占有する故意を有する場合、商標法第四十四条第1項のいう「その他の不正な手段で登録されること」に該当する。
6.商標代理機構が他人の名義を借用する出願
【判決要旨】商標法第十九条第4項は、「商標代理機構は、その代理している業務に関する商標登録出願を除き、その他の商標の登録出願をしてはならない」と規定している。商標代理機構が、本条の規制を回避するために、機構と特定の関係を有する主体の名義を借りて、商標の登録出願することも、本条が禁止する行為と見なされる。
7.ネット環境の下での他人の著名商標を他区分で登録出願すること
【判決要旨】ネット環境の下での商標が著名商標に該当するか否かを判断する際に、ネット環境での情報流布の特徴と流布の迅速性、ブランドの影響力とその影響の範囲などの諸要素を総合に判断すべく、使用時間の長さで機械的に判断してはならない。ネット環境の下で他人所有の著名商標を他区分で登録出願する行為に関して、行為者の主観上の故意の悪質さ、関連商品またはサービスの対象などを考慮し、規制すべきである。
8.権利上の瑕疵と信義則違反
【判決要旨】権利者は、自ら所有する登録商標が重大な権利上の瑕疵を持つことについて知りながらも、不当な商業利益を取得するために、他人の法的利益を害することを目的とし、他人に警告書を送信し、行政摘発を提起することは、信義則に対する厳重な違反行為となり、権利の濫用に該当する。
9.非善意取得権利と信義則違反
【判決要旨】当事者は、信義則に反し、非善意取得の商標権をもって、他人の正当な使用行為に対し、侵害訴訟を提起することは、他人の法的権利に対する侵害となり、権利の濫用に該当する。
10.ブランドに対する全面的なパクリ行為と懲罰的損害賠償
【判決要旨】「ブランド効果」は、総合的で複雑であり、その効果は単独な商標に依存するものではなく、企業の生産経営の各側面は、すべてブランドの商業名誉の媒体となる。そのため、単独な商標に対する権利侵害よりも、ブランドに対する全面的なパクリ行為は、ブランドのイメージと法的利益に対する危害が遥かに大きい。具体的には、権利者の商標と類似する商標の登録出願と使用、包装と装飾を模倣すること、真正品と模倣品を混ぜて販売すること、誤解されやすいような宣伝用語の使用などが含まれる。先行の知名度の高いブランドに対し、この類の全面的なパクリ行為は、厳重な権利侵害行為となるため、懲罰的損害賠償を適用することも可能である。
(今回の典型案例の詳細は、中華人民共和国人民法院の公式サイトにて確認可能 https://www.chinacourt.org/chat/chat/2023/12/id/53186.shtml)