(令和5年11月15日 知財高裁令和5年(行ケ)第10060号「POPPO事件」)
事案の概要 原告(審判請求人・出願人)は、本願商標(下掲左図参照)について登録出願をした処、拒絶査定を受けて不服審判請求(2022-3541)をしたが、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。 拒絶理由は商標法4条1項11号であり、本願商標の指定商品及び指定役務は29類「鶏肉の唐揚げ、とりの唐揚げ、唐揚げ用に衣をつけた鶏肉、唐揚げ用に衣をつけた鶏肉製品、冷凍した鶏肉の唐揚げ」及び43類「鳥から揚げを主とする飲食物の提供」で、引用商標1「ポッポ」は、指定役務 42類「らーめん・お好み焼・たい焼・フライドポテト・アイスクリーム及び清涼飲料を主とする飲食物の提供」 で、引用商標2(下掲載右図参照)は、指定役務 43類「飲食物の提供」である。
判 旨 (1) 本願要部(「POPPO」の文字部分)と引用商標1とを比較すると、外観においては、両者は、欧文字と片仮名とで異なり、色彩が相違するものであるが、商標の使用においては、商標の構成文字を同一の称呼を生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記したり、文字の色を変更したりすることがあることに鑑みれば、これらの外観上の差異が、看者に対し、強い印象を与えるとまではいえない。また、称呼においては、文字部分と引用商標1、「ポッポ」の称呼を共通にする。さらに、観念においては、文字部分と引用商標1は、共に特定の観念を生じるものではない。そうすると、本願要部と引用商標1は、外観において相違し、特定の観念を生じないものであるものの、称呼を共通にし、外観の相違は称呼の共通性による印象を凌駕するほどの顕著なものとは認められない。
(2) 本願要部と引用商標2を比較すると、外観においては、それぞれの構成文字の書体及び色彩、各文字の形状に沿って配される白抜きの円図形の有無、語尾の「O」 の文字の中心における星形図形の有無に差異はあるものの、文字のつづりを共通にするから、両者は外観において似通った印象を与え、 称呼においては、共に「ポッポ」の称呼を生じるから、両者は、称呼上、同一である。また、観念においては、共に特定の観念を生じるものとはいえない。 そうすると、本願要部と引用商標2は、外観上似通った印象を与えるものであって、称呼を同一とするものである。
(3) 本願商標の指定役務、引用商標1の指定役務、 引用商標2の指定役務を提供する者はいずれも飲食サービス業者であって業種が一致する。また、飲食サービス業者においては、同一店舗において、ラーメンと空揚げフライドポテト、お好み焼きと空揚げなどを提供することも行われており(証拠略)、さらに、提供する飲食物が相違する様々な店舗を同一経営者が飲食店グループとして運営することも一般的に行われている。以上によると、本願商標と各引用商標は、それぞれの指定役務において使用された場合、営業主体、すなわち役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるというべきであって、互いに類似するものであり、また、本願商標と各引用商標は、「飲食物の提供」の役務との点で共通するから、指定役務が類似するといえる。
コメント 本件は4条1項11号事案で、本願商標については要部観察が行われて、その要部と各引用商標とが称呼はもとより、引用商標2とは外観的にも類似と判断されたもので、妥当な類似判断である。原告は、本願商標よりは、図形部分を含めて「鶏冠」の観念を生ずると主張したが斥けられた。図形と文字との一体性を前提としたようだが困難である。
なお、原告が主張した各引用商標に係る販売商品と販売地域も需要者層も異なるため、出所等の混同が生じる可能性はないとの点については、原告が現在扱っている販売商品や販売地域に限定して比較するのは相当でないとされたのは当然である(平成28年3月16日 知財高裁平成27年(行ケ)第10193号 「コールマン事件」)。商標権の効力上、指定商品・役務全般について、全国使用が前提となる。