2024-01-30

工藤莞司の注目裁判:商品形態について被告商品形態に模倣が認められた事例

(令和5年12月4日 大阪地裁令和4年(ワ)第3577号 商品形態模倣行為事件)

事案の概要 本件は、原告が、原告商品1(通帳ケース・下掲左参照)、原告商品2(長財布)を製造、販売している処、被告による被告商品1(下掲右参照)、被告商品2の販売が不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為に該当するとして、被告に対し、不正競争防止法3条に基づく被告各商品の販売等の差止請求及び廃棄請求と、同法4条に基づく損害賠償金等の各支払請求をした事案である。

 

判 旨 実質的同一性について 原告商品1と被告商品1は、通帳ケースの外側のすべての形態(通常全体の大きさ及び形状、正面外側部に設けられたポケットの形状、大きさ及び位置、背面部の形状)、マチ部の上面及び側面部のすべての形態(開閉可能なフ ァスナーの配置)及び内部の形態の大部分(仕切り板の枚数及び大きさ、内側ポケットの数)において共通しているから、各商品から受ける商品全体としての印象が共通し、両商品の商品全体の形態が酷似しているといえる。他方で、両商品は、正面側及び背面側の各外装部裏面の裏面ポケットの有無、各外装部裏面の表面に設けられたカード等を収納するための小サイズのポケットの数(原告商品1は6個、被告商品1は4個)及び配置位置(高さ約1ないし2センチメートルの範囲内)の点で相違するが、いずれも些細な差異であり、商品の全体的形態について需要者に与える印象に影響するようなものではない。 したがって、原告商品1と被告商品1の形態は実質的に同一であると認められる。
 依拠性について 原告は、遅くとも令和3年6月22日から、第三者が自由に閲覧可能なECサイト楽天市場で原告商品1を販売しており、被告は容易に原告商品1にアクセス可能であったといえ、証拠(略)によれば、実際に、被告代表者が令和3年8月7日に原告商品1を購入した事実が認められる。また、被告商品1の販売開始時期は原告商品1の販売開始から約8か月後の令和4年2月25日である。以上によれば、被告商品1は原告商品1に依拠して製造販売されたと認められる。
 原告商品2と被告商品2の形態は、両商品の形態はすべての構成において共通する。 したがって、原告商品2と被告商品2の形態は実質的に同一であると認められる。原告は、遅くとも令和3年11月9日から、第三者が自由に閲覧可能なECサイトである楽天市場で原告商品2を販売しており、被告は容易に原告商品2にアクセス可能であったといえる。また、被告商品2の販売開始時期は原告商品2の販売開始から約4か月後の令和4年3月10日である。以上によれば、被告商品2は原告商品2に依拠して製造販売されたと認められる。

コメント 本件は、不正競争防止法2条1項3号の商品形態模倣行為について争われ、これが認められた事例である。裁判所は、模倣について、原被告両商品形態の実質同一性と被告商品形態の先行する原告商品形態への依拠性から判断し(不競法2条5項)、いずれも肯定した。各商品から受ける商品全体としての印象が共通し、両商品の商品全体の形態が酷似するとする一方、相違点は、いずれも些細な差異であり、両者の形態は実質的に同一であると認定、判断した。原告商品2と被告商品2についても、同様である。
 依拠性についても、原告商品が先行し被告のアクセス可能性から判断され、肯定された。被告の独自開発については、主張もされていないようだ。
 本不正競争行為は、他人が先行開発した商品形態のデッドコピーを禁止するもので、国内販売開始時から3年間の販売のみが対象となる(不競法19条5号イ)。