2024-02-19

工藤莞司の注目裁判:商標法4条1項10号の該当性が争われこれを認めた事例

(令和5年12月26日 知財高裁令和5年(行ケ)第10079号 「地球グミ」事件)

事案の概要 原告は、被告の有する商標登録(「地球グミ」(標準文字)登録第6525426号 出願日令和3年12月16日 指定商品30類「グミキャンディ」)について、商標法4条1項10号、19号違反を無効理由として、無効審判(2022-890049)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて本件訴えを提起した事案である。
引用商標は、原告が商品「グミキャンディ」に使用する商標「地球グミ」である。

判 旨 原告が原告商品の輸入販売を開始して以来、全国に店舗を展開する小売業者らは、原告商品を「地球グミ」と称してこれを繰り返し宣伝し、また、原告商品は、動画投稿サイトにおいても、「地球グミ」と称する商品として大人気を博していた。そのような原告商品は、令和3年6月、「地球グミ」と称する大人気商品として、全国紙による新聞報道及び在阪の準キー局によるテレビ報道がされるまでに至り、 同テレビ報道においては、同年上半期にはやった飲食物としてZ世代が選ぶランキングにランクインした。原告商品は、翌7月、同様の人気商品として、在京のキー局によるテレビ報道がされるに至り、20代前半の若者が皆知っていることとして紹介された。さらに、「地球グミ」と称する原告商品は、同年11月、動画投稿サイトへの投稿がきっかけで人気となった作品又は 商品の例として、著名作家の小説、有名シンガーソングライターの楽曲等と並べて紹介されるとともに、渋谷区にある著名な商業施設の運営会社による調査(略)の結果である「SHIBUYA 109lab.トレンド大賞2021」なる賞においても、その「カフェ・グルメ 20 部門」の2位に入賞した。
 このような「地球グミ」と称する原告商品の令和3年までの動向を踏まえ、令和4年1月に発行された「現代用語の基礎知識2022」においては、令和3年中に注目された物(食に係るヒット商品)として、原告商品の俗称たる「地球グミ」の語が取り上げられるに至った。以上の事情に照らすと、「地球グミ」の語(引用標章1)は、遅くとも本件査定日(令和4年2月22日)までには、原告又は原告商品の製造業者の業務に係る商品(原告商品)を表示するものとして、需要者間に広く認識されている商標に該当していたと認めるのが相当である。

コメント 本件は、商標法4条1項10号に係る無効審判請求事案で、知財高裁は引用商標について周知性を認めて、これを否定した不成立審決を取り消したものである。しかし、同号の判断時は、本件商標の出願日前とされている(商標法4条3項)が、本件判決は、本件出願日において本件商標が4条1項10号に掲げる商標に該当しなかった旨の主張立証はないとして、査定時に該当との判示をしたが、法の適用であり疑問で、違法ではなかろうか。