商標法第30条第1項は、商標の不登録事由を規定している。商標登録の異議申立又は無効審判において、最もよく引用される3つの規定は、同条項第10号、第11号、第12号であり、以下のとおりである。
第10号
同一又は類似の商品又は役務について、他人の登録商標又は先に出願された商標と同一又は類似であり、関連する消費者に混同誤認を生じさせるおそれがあるもの。ただし、当該登録商標又は先に出願された商標の所有者の同意を得て登録出願し、かつ、明らかに不当でないものは、この限りでない。
第11号
他人の著名商標又は標章と同一又は類似し、関連する公衆に混同誤認を生じさせるおそれがあるもの、又は著名商標又は標章の識別性又は信用名声を損なうおそれがあるもの。ただし、当該商標又は標章の所有者の同意を得て登録出願する場合は、この限りでない。
第12号
同一又は類似の商品又は役務について、他人が先に使用している商標と同一又は類似のもので、出願人が当該他人との間に契約、地縁、業務上の取引又はその他の関係を有することにより、他人の商標の存在を知っており、意図して模倣し、登録を出願したもの。ただし、その同意を得て登録出願する場合は、この限りでない。
商標登録の異議申立又は無効審判の根拠となる商標がすでに国内外で使用されており、台湾でも商標登録を取得済みである場合、前述の規定を同時に主張できるのか、また、これらの規定の適用の順序はどうなるのかについては、実務において重要な論争となっている。
最高行政裁判所は、112年(西暦2023年)度上字第30号判決において、以下のように述べた。商標法第30条第1項第12号には「商標が次に掲げる状況のいずれかに該当するときは、登録を受けることができない。……(第12号)同一又は類似の商品又は役務について、他人が先に使用している商標と同一又は類似のもので、出願人が当該他人との間に契約、地縁、業務上の取引又はその他の関係を有することにより、他人の商標の存在を知っており、意図して模倣し、登録を出願したもの。ただし、その同意を得て登録出願した場合は、この限りでない。」と規定されている。出願人の模倣の意図に加え、本号の適用の要件には、(1)他人が先に使用している商標と同一又は類似する、(2)同一又は類似の商品又は役務に使用する、(3)出願人が当該他人との間に契約、地縁、業務上の取引又はその他の関係を有することにより、他人の商標の存在を知っている、(4)他人の同意を得ずに登録出願した、などの要件も含まれる。また、本号の趣旨は、他人が創作した商標を剽窃して先取り登録することを避け、商標が他人によって不正に先取り登録された場合に、商標の先使用者に救済の機会を与えることにある。台湾の商標法は使用主義ではなく、登録主義を採用しているため、原則として、台湾で使用されているが登録されていない商標は保護されないが、商標の使用は商標存在の意義とその価値の所在であるため、過度な硬直性による弊害が生じることのないよう、本号は、商標登録主義と属地主義の例外として、国内外において先使用されている未登録商標を保護する。したがって、先使用商標が台湾で登録されている場合、先取り問題はなく、本号の規定は適用されない。先使用商標が外国でのみ登録され、台湾で登録されていない場合、本号の保護対象となり、本号の規定が適用されることは言うまでもない。
最高行政裁判所は、商標の類否判断の原則も明らかにした。同裁判所によると、商標の類否及びその類似の程度は、商標図案全体を観察して判断すべきである。しかし、全体観察の原則のほかに、主要部分(要部)観察というものがある。これは、商標は全体として表示されているが、商品又は役務の消費者が比較的注意を払い、又は事後にその印象に残る部分をその出所識別標識として、商標図案の顕著な部分となる。要部観察と全体観察は互いに対立するものではなく、要部は、依然として最終的に商品又は役務の消費者に与える商標の全体的印象に影響するものであるから、要部観察で説明したことをもって、全体観察原則を適用していないとはいえない。