2024-03-11

工藤莞司の注目裁判:図形商標が指定商品の形状表示として商標法3条1項3号該当とされた事例

(令和6年1月30日 知財高裁令和5年(行ケ)第10076号 「ラベルプリンターカートリッジ図形」事件)

事案の概要 
原告(審判請求人・出願人)は、16類「ラベルプリンター用テープカートリッジ」を指定商品とした本願商標(右図参照)について登録出願をしたが、商標法3条1項3号に該当し同条2項の要件を具備しないとした拒絶査定を受けて、拒絶査定不服審判(2022-895)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。

判 旨
(上記の)事情を総合すれば、本願商標の形状は、客観的に見て、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されたものであり、かつ、本願商標の需要者であるオフィス用品、事務用品を購入する一般の消費者において、同種の商品等について、機能又は美感に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものと認められる。そうすると、本願商標に係る立体的形状は、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみから成る商標として、商標法3条1項3号に該当するというべきである。
(上記の)事情を総合すれば、本件商品が販売開始から約30年が経過していること及び販売地域が全国であることを考慮しても、本願商標が需要者の目につき易く,強い印象を与えるものであったということはできないから、本願商標が使用により自他商品識別力を有するに至ったと認めることはできない。

コメント 
本願商標については、指定商品の形状を表したもので商標法3条1項3号に該当するとして審査、審判、取消訴訟で一貫して認定、判断された事例である。需要者であるオフィス用品、事務用品の一般の消費者の目線である。この種形状は当該商品の機能又は美感に資することを目的として採用されることを前提とし、立体商標の場合と同様である。
原告はアンケート結果を提出しているが採用されず、3条2項の適用も否定された。