「高級、高価、憧れ」は、エルメス・ブランドの製品を的確に表現する言葉である。バーキンに代表されるバッグとスカーフは特に有名だ。ラグジュアリーな魅力を持つ高級品で、ブランドの独占権と名声は厳重に保護されなければならない。
では、突然「Hermes(エルメス)」という名前とそれに対応するロゴを付けた法律事務所が現れたらどうだろうか?これこそが、エルメスが様々な商標の商品・サービス区分(合計29区分)で商標を登録している理由である。登録商標があれば、潜在的な侵害者を撃退するのは比較的簡単だ。エルメスは法律業務にも商標を登録していた。
その結果、EUIPO(欧州連合知的財産庁)は、商標が類似しサービスが同一であると簡単に判断した。また混同の虞は明らかだった。結局、法律事務所が出願した「HERMES」の文字とロゴの商標は登録を拒絶された。
注目すべきは、登録されている「HERMES」商標の数がかなり多いことである。ギリシャ神話の神々の名前(注:HERMESはギリシャ神話における最高神ゼウスの子どもの一人でオリュンポス十二神の一神)は人気のブランド名のようだ。もちろん、すべてがエルメスにとって問題となるわけではないが、これだけ広範囲に商標登録していれば、少なくともエルメスが何を相手にして、何を相手にしないのかを見分けるのは容易だ。