2024-04-22

韓国:モバイルアプリのアイコンへの標章使用に関する特許法院判決 - Kim & Chang

 特定サービスを提供するためのモバイルアプリのアイコンへの標章の使用は、商品区分第9類「ダウンロード可能なコンピュータソフトウェア」への使用だろうか、あるいは当該アプリによって提供される役務への使用だろうか?これと関連し、過去モバイルアプリを交換価値を有する商取引の目的物とみて9類への使用と認めた判例と、当該アプリが無料ダウンロードが可能な点、およびそのアプリを通じて提供されるサービスと不可分的に連動されているという点等を考慮して当該サービスへの使用と認めた判例が共存してきたところ、最近これを当該アプリを通じて提供される役務への使用と認めた特許法院判決(特許法院2024年2月1日言渡し2023ホ12862判決-確定)が出され注目を集めている。

 被告は36類の電子金融取引業等を指定役務とする登録商標「(下図①)」の商標権者として、電子金融取引業を提供するモバイルアプリのアイコンに「(下図②)」標章(「確認対象標章」)を使用した。これに対し原告は、被告の上記確認対象標章の使用が9類「ダウンロード可能なコンピュータソフトウェア」等に登録された自身の登録商標「(下図③)」の権利範囲に属するという積極的権利範囲確認審判を請求し、被告は自身の確認対象標章の使用は自身の登録商標と取引通念上同一の標章を、その指定役務である「電子金融取引業」に使用したものに過ぎないと主張した。

 これについて特許法院は、被告の登録商標の指定役務である「電子金融取引業」は「電子的装置を通じて利用者に金融商品およびサービスを提供する業」を意味すると前提したうえで、被告が確認対象標章をGoogle PlayおよびアップルのApp Store上で「電子金融取引業のアプリケーション」に表示したことは、「電子金融取引サービスの提供時に需要者の利用に供されるものに商標を表示したものを利用してサービスを提供する行為」として、被告が自身の登録商標と同一性範囲内の標章をその指定役務である「電子金融取引業」に使用したものであるとして被告の主張を認めた。また法院は、同じ理由で原告の請求はいわゆる権利対権利間の積極的権利範囲確認審判に該当するとして不適法却下すべきであることを明確にした。

 上記の特許法院判決は、サービス提供者が9類のソフトウェアに関連して商標を登録できていなくても、当該アプリで提供されるサービスと関連して商標を登録しておいたなら、必ず商標権侵害リスクがあるとはいえないという点を示唆する判決として意味が大きい。ただし、これは被告の登録商標の指定役務が「電子金融取引業」で、「電子的装置を通じて提供される金融取引サービス」である点が考慮されたはずであるため、指定役務名に「電子」という用語が含まれていなくても果たして同旨の判決が下されることができたかは不明である。したがって、このイシューに対する法的不確実性を考慮するとき、モバイルアプリを通じたサービス提供時の潜在的紛争の余地をなくすためには、アプリを通じて提供するサービスの他に9類のソフトウェア関連商品にも商標登録をしておくことが依然推奨される。