2024-04-10

EUIPO長官が拡大審判部に「EU商標の国内商標出願への変更」に関する質問を付託

 欧州連合知的財産庁(EUIPO)長官は、EU商標規則(EUTMR)の解釈について、拡大審判部(Grand Board of Appeal)に明確化を求めた。これはEUTMR第157条4項(l)に規定されるもので、長官はEUTMRの統一的な適用を確保するために法解釈に関して拡大審判部に質問を付託することができる。 

 質問は、特定の加盟国で登録可能性の問題が発生した場合に、EUTM出願または登録を1つまたは複数のEU国内出願に変更できるプロセスである「変更(conversion)」に関するものである。このプロセスは、EUTMの単一性の欠点を克服することを目的としており、最初のEUTM出願の優先日が維持される。

 拡大審判部に付託された質問は、EUTMR第139条2項(b)の解釈を中心に、権利変更が認められる条件を取り上げている。この条項は、EUIPOの決定が拒絶理由を特定している場合には変更を禁止する。しかし,このことは変更を妨げるためには決定が確定していなければならないかどうかという問題を提起する。これは、EUIPOがEUTM出願を拒絶し、審判手続中に出願が取り下げられた場合に関連する。2006年以降のEUIPOは、EUIPOの決定が出願の取下げにより「確定」していない場合でも、変更を排除するのに十分であるとしている。

 しかし、2022年9月26日の第4回審判部の審決(事件R 1241/2020-4「Nightwatch」)は、この解釈に疑いEUIPOの慣行に反して、第4審判部は拒絶査定が確定する前にEUTM出願の取下げがあった場合、EUIPOは変更を認めなければならないと決定した。この問題は欧州連合司法裁判所に提訴されていないため、長官は法的確実性の観点から拡大審判部の道理に基づいた意見を得ることが適切であると考えた。 

 重要なのは、委任規則(EUTMDR)第37条6項に基づき、利害関係者がこの件について拡大審判部に意見を提出する権利を有するということだ。4月号の官報に付託文書が掲載された日から2ヶ月間意見を募集する。 

 この付託は、長官と拡大審判部とのより広範な対話の一環である。長官は昨年夏、拡大審判部の議長とメンバーに対して、EU団体商標の所有者となる法人の公法(public law)上の要件に関する案件R0378/2020-Gについて意見を求めるよう要請した。

本文は こちら (First referral of questions by the Executive Director to the‘Grand Board’of Appeal)