2024-05-20

工藤莞司の注目裁判:出願商標「Nepal Tiger」について商標法3条1項3号該当とした審決が取り消された事例

(令和6年4月11日 知財高裁令和5年(行ケ)第10115号 「Nepal Tiger」事件)

事案の概要 原告(請求人・出願人)は、「Nepal Tiger」を標準文字で表し、指定商品を27類「じゅうたん、敷物、マット、ラグ、 ヨガマット、織物製壁紙、壁掛け(織物製のものを除く。)」とした本願商標について登録出願を行ったが拒絶査定を受けて、拒絶査定不服審判(2022 -13795)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて、本件訴訟を提起した事案である。拒絶理由は、商標法3条1項3号及び4条1項16号該当である。                

判 旨 上記・・・に掲げた新聞記事、書籍 及びウェブサイトのいずれにも、「Nepal Tiger」又は「ネパールタイガー」との記載は存在せず、全証拠によっても、本願の指定商品に関連するウェブサイト等の記載において「Nepal Tiger」又は「ネパールタイガー」の文字が一体として用いられたものがあるとは認められない。したがって、「Nepal Tiger」の語句が、一体として「ネパールで生産されたトラの図柄を描いた、あるいはトラの形状を模した、じゅうたん、ラグ」を意味するものとして、じゅうたんの取引者等によって使用されている取引の実情が存在するとは認められず、その他の本願の指定商品に関連して「Nepal Tiger」の語句が一体として用いられる取引の実情が存在するとも認められない。そして、「Nepal Tiger」は、・・・「Nepal」は国家を示す語、「Tiger」は「トラ」を意味する語の意味を有する語を組み合わせたものといえるところ、「Nepal Tiger」の語句が一体のものとして辞書等に採録されているとは認められず、「Nepal Tiger」、「ネパールタイガー」又は「ネパールトラ」と呼ばれるものがあるとも認められない。

そうすると、「Nepal Tiger」の語句は、通常は組み合わされることのない「Nepal」の語と「Tiger」の語とが組み合わされ、まとまりよく一体的に表されたものといえることからすれば、一種の造語とみるのが相当である。本願商標の指定商品の内容からすれば、本願商標の取引者はじゅうたん類の製造業者及び販売業者であり、需要者は一般の消費者であると認められる。 そして、「Nepal Tiger」の語句は、これが本願の指定商品に関連して用いられる取引の実情があるとは認められず、 かつ、一体として組み合わされた一種の造語であるとみるのが相当であることからすれば、本願商標の取引者及び需要者は、「Nepal Tiger」の語句について、指定商品に係る商品の産地、販売地又は品質を表示 したものであると直ちに認識するものではないというべきである。

そうすると、・・・本願商標は、その指定商品に使用された場合に、本願商標の取引者、需要者によって、商品の産地、販売地又は品質を表示したものと一般に認識されるとは認められない。                                               

以上によれば、本願商標は、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものとはいえず、指定商品の産地、販売地又は品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえないから、商標法3条1項3号に該当するものとは認められない。指定商品に対して使用された場合であっても、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標とはいえず、商標法4条1項16号に該当するとは認められない。                                          

コメント 本件判決は、じゅうたん等については、「Nepal Tiger」又は「ネパールタイガー」としての直接の使用例がないことから造語として、商標法3条1項3号該当とした審決を取り消したものである。しかし、じゅうたん等について、Nepalの使用例、Tigerの使用例の存在を認定している。じゅうたん等の取引者には、ネパール産虎の柄のじゅうたん等との認識もあり得るのではなかろうか。専門家である。少なくとも、ネパール産との品質誤認のおそれはどうだろう。少し前の裁判例では、「Tibet Tiger」については、商品の産地又は販売地がチベットでトラの図柄又は形状といった品質表示として、逆の判断、結論であった(令和6年2月28日 知財高裁令和5年(行ケ)第10116号)。国名「Indonesia」を含む商標については、4条1項16号該当とした裁判例もある(令和6年3月27日 知財高裁令和5年(行ケ)第10131号)。