2024-05-13

工藤莞司の注目裁判:本件商標について分離観察をして引用商標と類似すると判断された事例

(令和6年3月27日 知財高裁令和5年(行ケ)第10068号 「0!0iMAIN」事件)

事案の概要 原告(請求人・引用商標権者)は、被告(被請求人)が有する本件商標(下傾図左参照・登録第6371695号)の登録について登録無効審判(2021-890032)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて、本件訴えを提起した事案である。争点は、商標法4条1項11号、15号に該当するか否かで、引用商標3(登録第4640297号)は下掲図右の通りで、指定商品の類否に争いはない。

 

判 旨 本件商標の分離観察の可否 本件商標のO!Oi部分は、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるといえ、本件商標の構成を考慮しても、本件商標の各構成部分(O!Oi部分及びMAIN部分)は、それらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほどに不可分的に結合していると認められないから、本件商標については、その構成部分の一部であるO!Oi 部分を抽出し、O!Oi部分だけを各引用商標と比較して商標の類否を判断することも許されると解するのが相当である。                                               
 本件商標のO!Oi部分と引用商標3は、外観、称呼及び観念の点で極めて相紛らわしいものであり、加えて、引用商標3と外観上同一視し得る形状を有する原告標章が原告らのロゴマークとして取引者、需要者の間に広く認識されていることなどを併せ考慮すると、本件商標のO!Oi部分と引用商標3については、両者が同一の商品又は役務について使用された場合、その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるものと認めるのが相当である。したがって、本件商標のO!Oi部分と引用商標3は、取引の実情に基づき、外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、互いに類似するものと認められる。

コメント 本件判決は、本件商標は、その「O!Oi」を要部として捉えて分離し、引用商標3と外観、称呼、観念上の類似を認めて、4条1項11号該当として、これを否定した審決を取り消したものである。本件商標の「O!Oi」が支配的印象を与えること、本件商標は一体不可分な結合ではないことからの分離観察である。そして、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察しての類似の判断である。引用商標に係るロゴの周知性も影響している。昨年末に、同一当事者間の先例があり、分離観察の事案で適用条文、結論も同じである(「5252byO!Oi」事件 令和5年12月4日 知財高裁令和5年(行ケ)第10067号)。