2024-05-07

工藤莞司の注目裁判:無断出願について商標法4条1項7号に該当するとされた事例

(令和6年3月14日 知財高裁令和5年(行ケ)第10112号 「Haqihana」取消請求事件)

事案の概要 本件異議申立ては、原告(被申立人・商標権者)が有する「Haqihana」を標準文字で表し、指定商品を18類「愛玩動物用引きひも、愛玩動物用のハーネス」とした本件商標登録(登録第6622434号)に対し、イタリア共和国法人ハキハナ社(異議申立人)は、登録異議申立てをした処、特許庁(被告)は、商標法4条1項7号に該当するとして本件商標登録を取り消す旨の決定をしたため、原告は、知財高裁に対し、その決定の取消しを求めて本件訴えを提起した事案である。申立人引用商標は、「Haqihana」の文字商標及び「Haqihana」(一部図)の構成からなる商標である。

判 旨 原告は、本件商標の登録出願を行った時点で、原告が本件商標の登録を受ければハキハナ社が引用商標を用いた本件商品等を日本国内で販売することができなくなる事態が生じ得ることを認識し、・・・むしろ原告以外の者による本件商品の販売を妨害、阻止することに主たる目的があったと認めることができる。上記・・・事情を総合すると、原告は、ハキハナ社が本件商品を含む同社の商品に引用商標を使用していることを認識し、かつ、原告が本件商標の登録を受ければ、ハキハナ社が引用商標を用いた本件商品等を販売することができなくなることも認識しつつ、そのような事態が生じても構わないと考えて、原告以外の者が日本国内で本件商品を販売することを許容するハキハナ社の意図ないし販売戦略に反し、本件商標権に基づいてアブレイズによる本件商品の販売を差し止め、将来的にも、並行輸入等で入手したハキハナ社の商品を日本国内で販売しようとする者の販売活動を妨害、阻止することを主たる目的とし、本件商標の登録出願を行ったと認められる。このような原告の本件商標の登録出願は、先願主義を採用している我が国の法制度を前提としても、商標法の目的(1条)に反し、公正な商標秩序を乱すというべきで、かつ、健全な法感情に照らし条理上も許されないというべきであるから、本件商標は同法4条1項7号に該当するというべきである。

コメント 本件事案は、登録異議申立事件の取消決定に対する取消訴訟で、知財高裁も、異議決定を維持したものである。本件商標の登録に4条1項7号違反を認めたもので、原告商標権者は、申立人商品の国内販売者である。
7号違反の理由は、①原告以外の者の本件商品販売の妨害、阻止を目的、②並行輸入業者等の本件商品の販売を差止め、将来的にも、並行輸入等による申立人商品の日本国内販売活動を妨害、阻止の目的等があると認定されたもので、これらが商標法の目的(1条)に反するとして、7号違反へ結び付いたものである。本来の7号の趣旨からは逸れているが、最近の裁判例(「zhiyun事件) 令和5年1月19日 知財高裁令和4年(行ケ)第10073号、「スマホ修理王事件」令和4年9月14日 知財高裁令和4年(行ケ)第10034号)にも存在する。原告側に悪意を超えて、当該相手方への権利行使を含めた出願、登録自体に不正の目的の意図の存在が認定されたからである。