2024-06-10

工藤莞司の注目裁判:出願商標「Tibetan Tiger」は、識別力がないとされた事例

(令和6年4月17日 知財高裁令和5年(行ケ)第10114号 「Tibetan Tiger」事件)

 事案の概要 原告(請求人・出願人)は、本願商標「Tibetan Tiger」(標準文字)、指定商品27類「じゅうたん、敷物、マット、ラグ、ヨガ用マット、織物製壁紙、壁掛け(織物製のものを除く。)」について登録出願をした処、拒絶査定を受けて拒絶査定不服審判(2022-13794)の請求をしたが、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。拒絶理由は、商標法3条1項3号及び4条1項16号該当である。

 判 旨 前記認定した取引の実情に基づいて検討するに、「Tibetan Tiger Rug」を構成する「Rug」の部分・・・「ラグ」の部分は、敷物の一種である「ラグ」一般を指し、・・・「Tibetan Tiger」の部分及び「チベタンタイガー」の部分は、「Tibetan Tiger Rug」又は「チベタンタイガーラグ」と称される商品が具体的に本件ラグであることを直接的に表示するものであるといえる。そうすると、本願商標は、その指定商品中の本件ラグとの関係においては、トラの図柄を模し、トラを上から見たときの平面形状をかたどったチベットじゅうたん又はこれをモチーフにした敷物という商品の品質等の特徴を表示する標章のみからなる商標であると認めるのが相当である。そして、本願商標は、「Tibetan Tiger」の語句のみからなり、標準文字で表してなるものであるところ、その指定商品中の本件ラグとの関係においては、商品の品質等の特徴を普通に用いられる方法で表示するものと認められる。                           
 以上のとおり、本願商標は、その指定商品中の本件ラグとの関係においては、商品の品質等の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ということができるから、商標法3条1項3号に掲げる商標に該当するというべきである。そうである以上、他の事業者において、本件ラグに該当する商品の製造、販売等をするに当たり、「Tibetan Tiger」と同一又は類似の標章を用いようとすることは当然に想定されるから、本願商標につき特定の者による独占使用を認めるのは公益上適当でない。本願商標は、独占適応性を欠くものである。本願商標は、商標法3条2項に規定する商標に該当しない。

 コメント 本件判決は、本願商標は、指定商品ラグの品質等の特徴表示するものと判断し、3条1項3号該当として、審決を維持したものである。取引の実情として、乙号証等により、「TIBETAN TIGER RUG」及び「チベタンタイガーラグ」との使用例から、丁寧に認定している。更に、独占不適との判断も示している。少し前に、出願商標「Tibet Tiger」は「じゅうたん」等については3条1項3号該当とした裁判例(令和6年2月28日 知財高裁令和5年(行ケ)第10116号)があるが、実際の使用例からというよりは認識論からの判断であった。いずれにせよ、取引者、需要者が指定商品について、当該商標をどう認識するかである(3条1項6号)。