2024-07-01

工藤莞司の注目裁判:商品形態神棚板等について不正競争防止法2条1項1号該当が否定された事例

(令和6年5月15日 東京地裁令和4年(ワ)第70009号 神棚板不正競争防止法事件)

事案の概要 本件は、原告が製造及び販売している神棚板(右掲斜視図写真参照)及び神具セットには、特別に顕著な特徴があり、当該特徴が原告の商品等表示として周知であったとし、被告が同じ特徴を有する神棚板及び神具セットを販売することが、不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に当たると主張して、被告の販売する神棚板及び神具セットの販売等の差止め並びに同神棚板及び同神具セットの廃棄及び被告ウェブページから同神棚板及び同神具セットの表示の削除を求め、さらに原告に生じた損害金等の支払を求めた事案である。

判 旨 商品の形態は、本来的には、商品の出所を表示する目的を有するものではなく、それが特定の出所を表示する「商品等表示」になるのは、商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性)、かつ、 その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され、又は極めて強力な宣広告や爆発的な販売実績等により、需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっている(周知性)場合であると解される。                 原告は、原告神棚板について、左右の略三角形状の側板と(特徴①)、前記側板の上部に掛け渡された上板と(特徴②)、・・・(特徴③)、(特徴④)、(特徴⑤)、(特徴⑥)、前記受け金具を、壁面に固定された取付け金具に着設又は離脱することによって、棚本体を壁面に着脱自在にする(特徴⑦)という特徴を有し、これらの特徴を有する形態が、遅くとも令和2年10月31日までには、原告の出所を示すものとして周知となり、原告の商品等表示となっていた旨主張する。原告が主張する原告神棚板の特徴①から⑦のうち、特徴⑦は、商品の機能をいうものであり、また、特徴⑥も金具の形状を問題とするものではなく商品の機能をいうものといえる。このような機能自体が商品の形態による商品等表示となることはないと解される。特徴①から⑤のうち、特徴①から③は壁面に取り付け可能な棚としては基本的な形態のものであることがうかがわれ、また、特徴④、⑤も、商品の一部分の特徴で、かつ、それぞれの形態自体は独特のものとはいえないことがうかがわれる。仮に、特徴①から⑤の組合せが他の同種の商品と異なる顕著な特徴であったと認められるとしても、原告神棚板の特徴①から⑤の組合せが原告の出所を示すものとして周知になったことはなく、原告の主張には理由がない。                                                     
原告神具セットについて、各報道や公刊物、展示、販売によって原告神具セットの各商品の各特徴やそれらの組合せが原告の出所を示すものとして需要者に周知になったとは認められず、また、報道等の回数の少なさや、展示、販売の際も多種類の商品の一つとして展示、販売されているにすぎないことからも、原告神具セットの各商品の各特徴やそれらの組合せが、原告の出所を示す表示として周知になったことはないと認められる。

コメント 本件は、商品の形態について、原告が不正競争防止法2条1項1号(周知表示混同惹起行為)上の保護を求めたもので、そのために必要な商品等表示としての特別顕著性(出所表示機能性)及び周知性がいずれも否定されたもので、従来からの裁判所の解釈に従った認定、判断である。判決上に現れた原告商品の販売状況等では、二次的にも特別顕著性等の獲得には足りないだろう。宣伝広告状況や販売数の立証が見えない。この種商品形態は、意匠登録が妥当だろうが新規性が問われる(意匠法3条1項)。また立体商標が考えられるが使用による識別力(出所表示機能性)の取得が必要で(商標法3条2項)、本件と同様の問題がある。