(令和6年7月8日 知財高裁令和6年(行ケ)第10010号 「オンライン医療モール」事件)
事案の概要
原告(出願人・審判請求人)は、「オンライン医療モール」を標準文字で表した本願商標について、指定商品及び指定役務9類「電子応用機械器具及びその部品、コンピュータプログラム及びコンピュータソフトウェア、アプリケーションソフトウェア、記録された又はダウンロード可能なコンピュータソフトウェアプラットフォー ム」、35類「医師の紹介、市場調査又は分析、商品の販売に関する情報の提供、経営の診断又は経営に関する助言、事業の管理、コンピュータデータベースへの情報編集、消費者のための商品及び役務の選択における助言と 情報の提供」及び44類「医療に関する相談、医療に関する相談の媒介、 医療に関する情報の提供、医療に関するコンサルティング、インターネットによる医療に関する情報の提供、調剤、服薬指導、健康診断、健康管理、ダ イエット・栄養摂取又は健康管理に関する情報の提供、栄養の指導、ダイエット・健康管理に関する助言・指導・診断」として、登録出願をしたが、商標法3条1項6号該当を理由に拒絶査定を受けて、拒絶査定不服審判(2023-7241)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、その取消しを求めて提訴した事案である。
判 旨
「オンラインショッピングモール」は、「様々な商品の小売販売に係るサービスをネットワーク上の1か所のプラットフォーム上で提供又は利用できる仕組み」といった意味で用いられているものと理解され、本件の参考になるものといえる。また、証拠によれば、「医療モール」 の文字は、「診療科が異なるいくつかのクリニックが1カ所に集まっている運営形態」(甲14)といった語として広く使用されていることも認められ、 「オンライン上で自由診療の医療モールを作る」、「e-メディカルモール」(いずれも甲17)といった用法で使用されていることも認められる。以上のような実情を踏まえると、本願商標は、「オンライン」で行われる仮想的な「医療モール」、すなわち「様々な医療機関に係るサービスを、ネットワーク上の1か所のプラットフォーム上で提供又は利用できる仕組み」 といった意味合いを容易に理解、認識させるものと認められる。そして、本願商標に接し、上記意味合いを理解・認識した需要者は、本願商標について、上記の仕組みの下で提供される商品又は役務であることを表現するための語句であると理解、認識するにとどまり、自他商品役務の識別標識としては認識しないといえる。以上によれば、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標であるといえ、商標法3条1項6号 に該当する。
コメント
本件事案については、知財高裁も、3条1項6号該当と判断し、審決と同様である。原告は、他に使用例ないとも主張したが、6号の適用において当該商標が現実に使用されていることを要求するものではないとされた。同号は、取引者、需要者の認識の問題であるから、他に使用例があれば、認識への判断に至る度合いが増すだけであろう。
先に同旨の判決がなされた同じ出願人に係る「デジタル医療モール」事件(請求棄却 令和6年7月8日 知財高裁令和6年(行ケ)第10011号)がある。最近、本願商標のような一般的な既成語の出願が目立つが、その意味合いが容易に理解されて識別力なしとされ、その上時には、独占不適とされる商標も見受けられる。