2024-09-02

工藤莞司の注目裁判:「Sushi Zanmai」、「寿司三昧」の使用が商標権侵害とされた事例

(令和6年3月19日 東京地裁令和3年(ワ)第11358号 「すしざんまい」商標権侵害等請求事件)

本件事案

(被告表示2)

本件は、原告が、被告が被告ウェブページにおいて、すしを主とする飲食物の提供を行うすし店を紹介するために被告表示1「Sushi Zanmai」及び同2「右掲図」を掲載した行為は、原告が有する商標権(下掲参照)を侵害しているとして、は商標法に基づき、被告各表示の差止めを求めるとともに、商標法により算定される損害等の一部の支払を求めた事案である。原告商標権は、30類「すし」、43類 「すしを主とする飲食物の提供」等に係る「下掲図」(原告商標1登録第5003675号)、「すしざんまい」(原告商標2登録第5511447号)、「SUSHI ZANMAI」(原告商標3登録第5758937号)である。原告は、不競法2条1項1号及び2号違反に基づく請求をもしたが、裁判所は、選択的併合であるため、商標権を侵害についてのみ判断し、不正競争防止法に基づく請求については判断していない。

(原告商標1)

判 旨  
原告商標1と被告表示1の類否 原告商標1の「すしざんまい」を要部として抽出することができ、その要部は筆書体様の平仮名「すしざんまい」 という外観を有するのに対し、被告表示1はアルファベットの「Sushi Zanmai」という外観を有する点で、両者は異なるが、両者は、いずれも「スシザンマイ」という称呼及び 「すしに熱中する」という観念を生じさせるもので、その称呼及び観念は同一といえる。外観上の相違点は、平仮名とアルファベットという表記上の違いにすぎない。以上の外観、観念、称呼等によって取引者及び需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、原告商標1の要部と被告表示1は、同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあると認められるから、類似するというべきである。                                                  原告商標1と被告表示2の類否 原告商標1の「すしざんまい」を、被告表示2の「寿司三昧」及び「Sushi Zanmai」を、それぞれ要部として抽出することができ、原告商標1は筆書体様の平仮名の「すしざんまい」という外観を有するのに対し、被告表示2は筆書体様の漢字の「寿司三昧」 及びアルファベットの「Sushi Zanmai」という外観を有する点で、両者は異なるが、両者の称呼及び観念が同一である。全体的に考察すると、原告商標1の要部と被告表示2の要部は、同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあると認められるから、類似するというべきである。                                                  

原告商標2、同3と被告各表示の対比 原告商標2は「すしざんまい」という標準文字から構成されるものであるが、これと被告各表示が類似することは、前記と同様である。原告商標3はアルファベットの「SUSHIZANMAI」という外観を有するのに対し、被告表示1はアルファベ ットの「Sushi Zanmai」という外観を有しており、両者は 「S」と「Z」以外の文字が大文字であるか、小文字であるかという点で異なるが、両者の称呼及び観念が同一である。また、上記の外観上の相違点については、表記上のわずかな違いにすぎない。全体的に考察すると、原告商標3と被告表示1は・・・類似するというべきである。
被告表示2について 全体的に考察すると、原告商標3と被告表示2は、同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあると認められるから、類似するものというべきである。                                                    
                                                    本件各ウェブページにおける被告各表示は、すしを主とする飲食物の提供を行う本件すし店を紹介するために掲載されたもので、「すしを主とする飲食物の提供」と類似の役務に係るものといえるから、原告各商標の指定役務と被告各表示に係る役務とは類似するものといえる。

コメント 
本件事案では、原告登録商標と被告使用商標との類否が争われたもので、結合商標については、「すしざんまい」、「寿司三昧」、「Sushi Zanmai」をそれぞれ要部として類否を判断し、類似商標と判断されたものである。使用前に調査をすれば、原告登録商標の存在は容易に見付かれると思われ、場合によっては、ライセンス(使用許諾)交渉も在り得る。寿司業界では、未だそのような調査等をする環境にはないのだろうか。被告には600万円もの高額な賠償金が認定されている。残念である。