2024-09-24

工藤莞司の注目裁判:不正競争防止法2条1項2号適用事件において、被告に先使用が認められた事例

(令和6年7月17日 東京地裁令和3年(ワ)第29242号 「株式会社チーム・ラボ」事件)

事案の概要 
 本件は、原告が、被告に対し、原告の表示「チームラボ株式会社」、「チームラボ」、「teamLab」は著名な商品等表示であって、被告が表札、看板、URLに開設ウェブサイト等に、原告表示と同一又は類似の「株式会社チーム・ラボ」、「チームラボ」等の被告表示を使用する行為は、不正競争防止法(「不競法」)2条1項2号の不正競争著名表示冒用行為に該当すると主張して、不競法3条1項及び2項に基づき、被告表示等の使用の差止め、被告商号の抹消登記手続等と、不競法4条に基づき損害金等の支払をそれぞれ求めた事案である。

判 旨 
 前記のとおり、平成30年以降、特定の層に限られない一般消費者が原告の作品を展示する施設や当該展示に係る広告宣伝に付されている原告表示等を目にすることで、原告の作品を展示する展示会等に対する関心を持つ者が増加し、原告表示等は、それまで以上の速度で知名度を獲得していったと考えられる・・・。そして、チームラボボーダレス及びチームラボプラネッツが開館した平成30年6月ないし7月以降も、県庁所在地など都市を中心に原告表示等を用いた展示名による作品展示が行われていること、多くのテレビ番組で、原告の作品が原告表示等と共に多数紹介されており、特に令和3年に入って、ニュース番組、情報番組とは視聴者層が異なると考えられる番組においても、チームラボボーダレス及びチームラボプラネッツが数多く紹介されていたこと、その他原告の受賞歴等や原告ウェブサイトへのアクセス数を考慮すると、原告表示等は、現時点において著名な原告の商品等表示に当たると認められるものの、著名になった時期は、早くともチームラボボーダレス及びチームラボプラネッツが開館して約3年が経過した令和3年7月頃であったと認めるのが相当である。
 前記の検討結果を総合考慮すると、被告が被告表示等を使用するに当たり、被告の営業の需要者に原告の営業と誤認させたり、原告表示等にただ乗りして同業他社より優位な立場に立つなどして不正の利益を得る目的、原告の顧客を誘引したり、原告の信用を毀損するなどして原告に 損害を加えたりする目的、その他の不正の目的はなかったものであり、その状態が現在も継続していると認めるのが相当である。以上によれば、被告は、原告表示等が著名になる前から被告表示等を不正の目的でなく使用していると認められるから、被告による被告表示等の使用行為については、不競法19条1項柱書及び同項5号により、不競法3条及び4条は適用されない。

コメント 
 本件事案では、被告表示「株式会社チーム・ラボ」等について、不競法2条1項2号該当性が争われた中で、裁判所は、原告表示は著名表示と認定したが、被告表示の使用は、不正の目的のない先使用であり適用除外規定(不競法19条1項5号)に当たるとして、原告の請求を棄却したものである。不競法2条1項2号事案、著名表示冒用行為は稀有な事例で、さらに先使用の成立は珍しい。被告側の原告表示の著名性獲得前からの使用についての立証等が成功したもので、事案に即した主張(抗弁)、立証行為が重要であることを示している。