2024-11-07

工藤莞司の注目裁判:出願商標「京都高麗人参」は商標法3条1項6号該当とされた事例

(令和6年8月29日 令和6年(行ケ)第10027号 「京都高麗人参」事件)

事案の概要 
 原告(審判請求人・出願人)は、指定役務を35類 「高麗人参を含有するサプリメントの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、高麗人参を含有する健康食品・健康関連商品・サプリメントの販売に関する情報の提供、高麗人参を主原料とする粉状・顆粒状・錠剤状・固形状・液体状又はカプセル入りの加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、高麗人参を含有する加工食品の販売に関する情報の提供」(補正後)とする本願商標「京都高麗人参」(標準文字)について、登録出願をしたが拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判(2022-410587)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて、本件訴えを提起した事案である。拒絶理由は、指定役務の取扱商品(サプリメント等)の品質、原材料を表示したものと認識するにとどまり、何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものであるとした商標法3条1項6号該当である。                               

判 旨 
 本願商標の構成文字の語義に加え、上記のとおりの農作物、薬用作物、高麗人参及びサプリメント又は健康食品に係る取引の実情を踏まえると、・・・本願指定役務に係る取扱商品「高麗人参を含有するサプリメント」についても、その商品の効能や原材料、成分などは、商品選択の際に重要な要素となり得ると認められる。この「サプリメント」の原材料として使用されている高麗人参については、全国各地で生産されていて、・・・その生産地が商品の特性や優位性を表すものとして商品の説明等に使用されており、その取扱商品である「サプリメント」においても、「高品質な大根島の高麗人参の主根のみを粉末にした」等の記載にもあるように、顧客の商品選択の便宜を図るべく、原材料その他の特徴等を説明するための用語として、「『高麗人参』及びその産地の名称」が一般に使用されている実情もある。また、本願指定役務中の、・・・「粉状・顆粒状・錠剤状・固形状・液体状又はカプセル入りの加工食料品」は、サプリメント若しくは健康食品又はこれと同種の商品と認められる。そして、上記のとおり、高麗人参は、サプリメント又は健康食品の原材料として一般に使用されているものであり、上記のウェブサイトの記載等に照らすと、そのことは需要者においても広く知られていると認められる。そうすると、本願商標を、その指定役務中、「高麗人参を含有するサプリメ ントの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、高麗人参を含有する健康食品・健康関連商品・サプリメントの販売に関する情報の提供、高麗人参を主原料とする粉状・顆粒状・錠剤状・固形状・液体状又はカプセル入りの加工食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に使用をしても、当該指定役務に係る需要者をして、「京都産の高麗人参」を使用したサプリメント等を取り扱う小売又は卸売の業務であること、すなわち、小売又は卸売の業務において取り扱われる商品の品質、原材料を表したものと認識させるにとどまり、役務の出所を表示するものと認識させることはないというべきであるから、本願商標は自他役務の識別標識として機能し得ないものである。                                                            

コメント 
 本件事案は、商標法3条1項6号該当事例であるが、本願商標の「京都高麗人参」は、健康食品・健康関連商品・サプリメントの原材料表示、品質表示であることを前提として、本件指定役務サプリメント等を取り扱う小売又は卸売の業務については、当該役務の出所を表示するものと認識させることはないと判断したものである。サプリメント等を購入する取引者、需要者はその原材料表示、品質表示と認識することは当然であろう。このような出願商標については、6号適用が商標審査基準にも明定されている(16版46頁)。