10月30日、知的財産高等裁判所は、映画「シン・ゴジラ」に登場するゴジラの形状について、立体商標と認めなかった特許庁の審決を取消す判決を下した。
東宝は、シン・ゴジラの形状を立体商標として登録出願したところ、指定商品「縫いぐるみ、アクションフィギュア、その他のおもちゃ、人形」については、単に商品の品質・形状を普通に用いられる方法で表示するであるとして拒絶査定(商標法3条1項3号該当)を受け、拒絶査定不服審判を請求したが覆らなかった。東宝は、商標法3条1項3号該当性の判断の誤りと商標法3条2項(使用による識別性を獲得した)該当性の判断の誤りを取消事由として知財高裁に審決取消訴訟を提起した。
知的財産高等裁判所は、出願商標が商標法3条2項に該当しないとした審決の判断には誤りがあるとして審決を取り消す判決を下した。
取消事由について;
商標法3条1項3号該当性について
出願商標の立体的形状に係る特徴は、世上一般的にみられる、恐竜や怪獣をかたどった立体的形状が有する特徴と本質的に異なるものではなく、指定商品に係る商品の形状そのものの範囲を出るものとまで認めることはできず、「縫いぐるみ、アクションフィギュア、その他おもちゃ、人形」という商品の機能や、美観の発揮の範囲において選択されるものにすぎないというべきであり、商標法3条1項3号に該当する。
商標法3条2項該当性について
シン・ゴジラの立体的形状は、それ以前のゴジラ・キャラクターと比較して相当の違いがあり、両者を同一(実質的に同一)と認めることは相当でないが、商標法3条2項の「使用」の直接の対象はシン・ゴジラの立体的形状に限られるとしても、その結果「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる」に至ったかどうかの判断に際して、「シン・ゴジラ」に連なる映画「ゴジラ」シリーズ全体が需要者の認識に及ぼす影響を考慮することは、何ら妨げられるものではなく、むしろ必要なことというべきである。
総合的に判断すれば、出願商標については、その指定商品に使用された結果、需要者である一般消費者が原告の業務に係る商品であることを認識できるに至ったものと認めることができる。特許庁の主張は、ゴジラ・キャラクターの圧倒的な認知度の前では些末な問題であり、使用による識別性を獲得したことの判断を左右しないと退けた。
これらから、商標法3条2項に該当しないとした審決の判断には誤りがある。