こんにちは、鈴木三平です。
第5話は「AL DENTE」です。
「アルデンテ」の対極にあるのが、「ソフト麺」ですかね。といっても60年代後半の給食だったので、結構歳とっていないと分かりませんよね。当時、「ソフト麺のミートソース」は、小学生には結構な人気メニューだったと記憶しております。「アルデンテ」には、博多ラーメンの「バリ固」に通ずるものがあるのですかね?
1.辞書情報
イタリア料理用語辞典
dente[デンテ](町田亘・吉田政国編『イタリア料理用語辞典』白水社 1992年初刷59ページ)
男 歯,牙,器具類の歯.
al ~ 特にパスタや米などのゆでかげんをいい,歯ごたえのあるしこしこした状態.
注:男=男性名詞
2.商標の状況
<不服2003-19679(いったん登録拒絶の(2)を登録すべきと判断した審決から抜粋)>
前半部分の「アルデンテ」の文字部分が「パスタをゆで上げたときの歯ごたえのあるゆで加減のこと」等を意味する「al dente」の読みを片仮名文字で表したものであって、また、後半部分の「ペルフェット」の文字部分が「申し分のない」等を意味する「perfetto」の読みを片仮名文字で表したものであり、また、その指定商品を取り扱う分野においてイタリア語が比較的使用される傾向にあることを考慮したとしても、これに接する取引者・需要者が一見して直ちにその意味を認識、理解することができるほど親しまれた語を表したものとは言い難く、むしろ、全体として既成の観念を有しない一種の造語として認識し把握するとみるのが相当である。
3.その他情報
(1)吉川敏明『ホントは知らないイタリア料理の常識・非常識』 柴田書店 2010 88ページ
日本は「この30年、アル・デンテ、アル・デンテと呪文のように唱えながら、やっとイタリアと肩を並べるところまできたわけです。」
(2)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「アルデンテ」の検索結果。
ノイズらしきものは件数から省いた。読売新聞では80年代に出現し、90年代後半からは、概ねコンスタントに使われているといってよいのではないだろうか。
4.コメント
吉川先生によれば、80年代ぐらいから「アル・デンテ」は日本に普及し始めたことになる。(1)の登録はともかく、(2)は、全体が「「歯ごたえのある茹で加減が申し分ない」の意味合いを想起し得る」として、「商標として機能しない」としていったん拒絶査定された。ただ、「そこまでの意味合いを想起するというのは無理」ということで、登録されたものである。既登録の(1)と類似とされることもなく、審決の判断からみても、パスタ等に「アルデンテ」といったところで、(1)の登録時点ではあまり知られていなかったかもしれないけれど、(2)の審理の時点、いや、それ以前から、ゆで加減を言っているだけだといえる。世の中でも普通に使われていて、特定の会社の商標(商品識別標識)なんてことは、審査官等の眼中にもなく、いまや「アルデンテ」が「商標として機能しない」ということは、審決の書きぶりからも明らか、仮に権利行使でもすれば「筋が悪い」と非難されるのがオチだったのであろう。とはいえ、10年に1回お金を払って権利は維持されている。
<注>
構成は、「1.辞書、2.商標の状況、3.その他、4.コメント」とした。商標・イタリア料理・調査、いずれのプロからも、「半人前」だとの集中砲火を浴びるかもしれないが、多少不十分な点があろうとも、面白いと思える発見があれば幸いである。商標についても、時代によっては情報が薄いところもあり、間違っているところ、私の知らないネタがあれば、「タレコミ」は大いに歓迎したい。
なお、出願人、権利者は表示せず、紹介する商標中に、各社のブランドマークにあたる部分がある場合にも、”Trademark”という表示とする。記した番号から調べればすぐ分かることであるが、筆者のいた会社も含めた当事者等が悪者にされる等、話題があらぬ方向に逸れることを少しでも避けたいからである。
* 「指定商品又は指定役務」は、問題となった部分のみで、全部を表示していないことがある。
* 「消滅」は、存続期間(分納)満了、拒絶査定・審決、取消の日等で、確定の日でないものもある。
* 番号は出願番号と、あるものは異議・審判番号のみとし、登録されたものも、登録日のみとして、原則としてその番号は省略した。
次回は、酒類「リモンチェッロ」と「グラッパ」「アマレット」について扱う予定。ワインについてもいろいろあるのだが、熟成までもう少しお時間を!