(令和6年10月30日 知財高裁令和6年(行ケ)第10025号 立体商標ランプシェード事件)
事案の概要
被告(被請求人・商標権者)が有する本件立体商標(右掲図外参照)で、11類「ランプシェード」を指定商品とした登録(登録第5825191号)に対し、原告(請求人)は、無効審判(2020-890080)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、本件審決の取消しを求めて提訴した事案である。無効理由は、本件立体商標は、デザイナー A (1894~1967)のデザインに係るもので、被告は本件商標を日本において不正に使用し、特許庁を欺いて権利取得したことになり、これらの行為は国際信義則及び公序良俗に反し、商標法4条1項7号該当というものである。
判 旨
原告は、被告がA又はその相続人から本件商標に係る商品の著作権についてライセンス契約の締結を受けていないとして、これを問題とするところ、商標法には、他人の著作権と抵触するような商標登録を禁じる規定はなく、むしろそのような商標登録が発生し得ることを前提に、同法29条により先行著作権との調整を図っているのであって、他人の著作権 との抵触の一事をもってしては、同法4条1項7号に該当しないというべきである。Aの相続人と被告との間の著作権に関するライセンス契約の成否、有効性いかんの問題は、同号該当性に影響を及ぼすものではない。また、本件商標は、出願過程において、商標法3条2項が適用されているところ、被告とA又はその相続人との間で、本件商標に係る著作権について紛争となっている等、その出願が国際信義に反するような事情が生じていることの主張立証はない。本件は、原告において、「被告による A のデザインの盗用」という根拠のない憶測を述べているにすぎない事案といわざるを得ない。以上のとおりで、本件商標が商標法4条1項7号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはない。
コメント
本件事案は、4条1項7号該当を争ったものであるが、その理由は他人に著作権があるというもので、他人の著作権の存在は商標登録の障害ではなく、登録後その使用の態様によっては制限があると規定とされている(商標法29条)。原告の請求は斥けられた。判決では、それも根拠のない原告の憶測としている。