2024-12-09

工藤莞司の注目裁判:被告のウェブページ掲載行為は国内での使用には該当しないとして控訴が認容された事例

(令和6年10月30日 知財高裁令和6年(ネ)第10031号 「Sushi Zanmai」控訴事件 原審・令和6年3月19日 東京地裁令和3年(ワ)第11358号)

事案の要旨 
 原告(被控訴人)各表示「すしざんまい」外を商品等表示として使用するとともに、原告各商標権(登録第5003675号外)を有している原告が、被告(控訴人)が本件各ウェブページにおいて被告各表示「Sushi Zanmai」「寿司三昧・図」を掲載した本件ウェブページ掲載行為及びアカウントにプロフィール写真として被告表示2を掲載した本件アカウント掲載行為について、不正競争防止法2条1項1号又は2号に該当すると主張するとともに、これらの掲載行為は原告各商標権の侵害(商標法37条1号)となると主張して、各請求をした事案である。原審は、原告の請求を、商標法36条1項に基づき、本件各ウェブページにおける被告各表示の差止め及び削除を求める限度で、民法709条(商標権侵害)に基づき、約600万円及び遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余の請求を棄却した。被告は、敗訴部分を不服として控訴した事案である。控訴裁判所は、適用法はいずれも日本法とした。

判 旨 
 当裁判所は、本件ウェブページ掲載行為は、被告各表示を商標として「使用」するものとはいえず、商品等表示を「使用」するものともいえない上、仮に商標としての使用等であると考えた場合でも、日本国内で提供される役務について使用されたものと認めることはできないから、原告の請求にはいずれも理由がないと判断する。被告各表示の商標法2条3項8号該当性について前記本件ウェブサイトの構成と記載内容によれば、本件ウェブサイトは、全体として、被告を含むダイショーグループが東南アジアにおいて日本食を提供する飲食店チェーンを展開するとともに、そこで提供するための鮮度の高い良質な食材を日本から輸出する事業を紹介するものと認められるから、被告各表示を付した本件各ウェブページについても、本件すし店の「役務に関する広告」に当たると認めることはできない。以上によれば、被告各表示は、その態様に照らし、食材の海外輸出を検討する国内事業者に向けた本件各ウェブページの中で、被告の事業を紹介するために使用されているにすぎず、本件すし店を日本国内の需要者に対し広告する目的で使用されたものではない。したがって、本件ウェブページ掲載行為は、「本件すし店の役務に関する広告を内容とする情報を電磁的方法により提供する行為」として商標法2条3項8号に該当するということはできない。2001年に・・・一般総会において採択された「インターネット上の商標及びその他の標識に係る工業所有権の保護に関する共同勧告において、インターネット上の標識の使用は、メンバー国で商業的効果を有する場合に限り、当該メンバー国における使用を構成するとされていること(共同勧告2条)とも整合するものである。以上によれば、原告の主張を考慮しても、本件各ウェブページは、日本からの食材の輸出という役務の広告というべきであり、仮に被告各表示を本件すし店の役務の広告であると考えた場合でも、当該役務は国外で提供される役務であるから、原告各商標の国内における出所保護機能を害するものではない。本件ウェブページ掲載行為は、被告各表示を商品等表示として「使用」するものに当たらないから、不競法2条1項1号に基づく原告の請求は、理由がない。

コメント 
 本件事案について、被告の本件ウェブページ掲載行為が商標法2条3項8号に該当するか否かが争われて、知財高裁はこれを否定したものである。すなわち、被告が日本から輸出する事業を紹介するために使用されているもので、提供役務について、日本国内の需要者に対し広告目的で使用されたものではないとした(不正競争防止法上の使用についても同旨)。この点原審とは判断が相違して、被告(控訴人)の控訴が認容され、原告(被控訴人)勝訴部分が取り消された。本件解釈は、2001年のWIPO等の共同勧告とも整合するとダメを押している。