こんにちは、鈴木三平です。
第6話は「LIMONCELLO」と「GRAPPA」「AMARETTO」です。これら、これを読みながら連続的に味わうと、悪酔いすることは確実です。
ワインやカクテルについてもいろいろあるのですが、もう少しまとまってからにしたいと思います。
Ⅰ.LIMONCELLO
1.辞書情報
イタリア料理用語辞典
limoncello[リモンチェッロ](町田亘・吉田政国編『イタリア料理用語辞典』白水社 1992年初刷99ページ)
形 レモン色の.
「伊和中辞典 2版(コトバンク)」
limoncèllo [名](男) 1 リモンチェッロ(レモン味がする強い酒)
https://kotobank.jp/itjaword/limoncello#w-2263945
注:形=形容詞、名=名詞、男=男性名詞
2.商標の状況
<拒絶理由通知書より抜粋>
需要者(取引者を含む。)は、「リモンチェッロ(limoncello)」あるいは「リモンチェッロ(limoncello)を使用した商品」であること、すなわち、商品の品質・原材料を表示したものとして認識するにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものとみるのが相当です
3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「リモン(レモン)チェッロ(チェロ)」の検索結果。グラフにするほどのこともないが、ときどき出てくるというところ。
4.コメント
(1)の登録時点(1997)では、「リモンチェッロ」はあまり知られていなかったかもしれない。(2)は(1)と併存していないが、出願時点(2013)から指定商品を「レモンリキュ-ル」に限定しており、「リモンチェッロ」部分の権利主張は困難だったと考えていた節がある。(3)の審査(2020)、拒絶査定(2021)によって、そのことが可視化されたと言ってよいだろう。
Ⅱ.GRAPPA
1.辞書情報
イタリア料理用語辞典
grappa[グラッパ](85ページ)
女 グラッパ(ワインの絞りかすを蒸留して作った無色透明のブランデー).
注:女=女性名詞
2.商標の状況
3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「グラッパ & 酒」の検索結果
ノイズ防止のために「グラッパ & 酒」で検索したが、それによって落ちたものもあるかもしれない。2010年にブームがあったと言っていいかどうか…
4.コメント
「グラッパ」については「商標として機能しない」といえる。原産地名称によって保護されるスピリッツがあるから、「グラッパ風」のようなものを使うと問題となる。商標について、もっと過去に何かあったかもしれないが、今後の課題としたい。
Ⅲ.AMARETTO
1.辞書情報
イタリア料理用語辞典
amaretto[アマレット](8ページ)
②男 アマレット酒(あんずの核と数種類の香草が原料のリキュール酒の一種でアーモンドの風味がある).
注:男=男性名詞
2.商標の状況
3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「アマレット」の検索結果
(2)「DELISH KITCHEN」のウェブサイト
「アマレットとはどんなお酒?特徴や美味しい飲み方などをご紹介」の見出しの下、
「アマレットとはアプリコット(杏)の種子の中心にある、「杏仁」という核を原料に作られたリキュールのことです。」
「アマレットはアーモンドのような香りがするリキュールですが、基本的にアーモンドは使われていません。しかし、最近ではビターアーモンドやビター抽出液などを加えたものも販売されています。」
https://delishkitchen.tv/articles/2312
(2024年12月15日閲覧)
(3)「Weather Spark」のウェブサイト
「Saronno の気候、月別の気象、平均気温(イタリア)」
https://ja.weatherspark.com/y/62434/Saronno/
(2024年12月15日閲覧)
4.コメント
出願から登録まで6年4か月。しかも拒絶理由通知が3回出ていて、審査の通過を表す出願公告決定まで約5年。おそらく、「アマレット」とは何かというところで、審査官(当時の公報には審査官名の表示がないので、誰なのかは不明)と、出願人(代理人)とのやり取りがあったものと思う。「イタリア産のリキュール」程度でいいのだろうけれど、実は「アマレット」にはアーモンドは入っていないようだが、結論としては「アーモンドリキュール」類が指定商品として認められた。
「AMARETTO」と、ときより併記されている「SARONNO」は、イタリア北部の地名と同一綴りで、商品の産地といえそうであるが、広く知られているとはいえそうもないところ、「AMARETTO」部分だけ分離観察することもできそうなので、この部分についてあまり深く考える必要もなさそうだ。
ということで、この種のリキュールに「AMARETTO」は「商標としては機能しない」から自由使用というところだろう。審査官もそのあたり、頑張ってくれたように思う。
<注>
構成は、「1.辞書、2.商標の状況、3.その他、4.コメント」とした。商標・イタリア料理・調査、いずれのプロからも、「半人前」だとの集中砲火を浴びるかもしれないが、多少不十分な点があろうとも、面白いと思える発見があれば幸いである。商標についても、時代によっては情報が薄いところもあり、間違っているところ、私の知らないネタがあれば、「タレコミ」は大いに歓迎したい。
なお、出願人、権利者は表示せず、紹介する商標中に、各社のブランドマークにあたる部分がある場合にも、”Trademark”という表示とする。記した番号から調べればすぐ分かることであるが、筆者のいた会社も含めた当事者等が悪者にされる等、話題があらぬ方向に逸れることを少しでも避けたいからである。
* 「指定商品又は指定役務」は、問題となった部分のみで、全部を表示していないことがある
* 「消滅」は、存続期間(分納)満了、拒絶査定・審決、取消の日等で、確定の日でないものもある
* 番号は出願番号と、あるものは異議・審判番号のみとし、登録されたものも、登録日のみとして、その番号は省略した
今回6話めで、初めて複数件を取り上げ、累積8件となった。まだまだ100選までは遠いが、次回は菓子関係、「アフォガート」「カノンーリ」「ザレッティ」について扱う予定。