2025-01-21

工藤莞司の注目裁判:指定商品が類似と判断されて商標法4条1項11号に係る成立審決が支持された事例

(令和6年11月27日 知財高裁令和6年(行ケ)第10051号 「ラクレコ」事件)

事案の概要 
 原告(審判請求人・出願人)は、「ラクレコ」を標準文字で表してなる本願商標について、指定商品及び指定役務を9類 「電子計算機への接続機能と音声データ・画像データ・映像データの送信機能とを備えたディスクドライブ」等及び42類「電子計算機用プログラムの提供」等として登録出願をし、指定商品及び指定役務を補正したが拒絶査定を受けたことから、拒絶査定不服審判(2023-4563)を請求し、指定商品及び指定役務を9類「音楽・映像データの取り込み・再生用ディスクドライブ」(「本願指定商品」)のみに再度補正したが、特許庁は不成立審決をしたためた、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。 拒絶理由は、商標法4条1項11号該当で、引用商標は、「ラクレコ」(標準文字、登録第6434946号商標)であり、指定商品及び指定役務中の9類「ダウンロード可能なモバイル機器用のアプリケーションソフトウェア」との類否が争点である。

判 旨 
 本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフ トウェアは、同一営業主により製造及び販売され、又は、同一販売店により販売される実情にある。本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアは、それぞれ役割が異なるものの、いずれも電子計算機による処理又は電子データの利用を行うために用いられる商品という意味において、その用途に共通点があるということができる。本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアの各需要者は、いずれも広く一般の消費者を含むものとして需要者の範囲において共通している。本願指定商品と引用商標データ処理装置又は本願指定商品と引用商標ソフトウェアは、いずれも完成品と部品の関係にはなく、需要者の範囲は共通している。
 以上によれば、本願指定商品と引用商標データ処理装置及び引用商標ソフ トウェアは、その生産・販売形態、用途、需要者の範囲において共通性があり、これらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にあるというべきであるから、本願指定商品と引用商標の指定商品は類似の商品に該当すると認めるのが相当である。

コメント 
 本件事案では、本願指定商品9類「音楽・映像データの取り込み・再生用ディスクドライブ」と引用商標指定商品「ダウンロード可能なモバイル機器用のアプリケーションソフトウェア」との類否が争われて、知財高裁でも類似の商品と判断され、審決が支持されたものである。その判断は、両商品の生産・販売者、用途、需要者の範囲から、これらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にあるとされたもので、橘正宗判例(昭和33年(オ)第1104号 最高裁昭和36年6月27日 民集15巻6号1730頁)により結論を導いている。判断手法は、実務上のものと異ならない(商標審査基準4条1項11号11.(1))。両商品の文言上からは分かり難いが、両者の生産者、販売者、用途や需要者の範囲からもので丁寧に認定、判断している。