(令和6年12月10日 知財高裁令和6年(行ケ)第10066号 「UNITED GOLD」事件)
事案の概要
原告(審判請求人)は、被告(審判被請求人・商標権者)が有する本件商標(「UNITED GOLD」標準文字第6534957号) 指定商品及び指定役務中、25類「スーツ、ネクタイ、履物、被服」及び35類「時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、おむつの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(「本件請求商品役務」)について、商標法4条1項11号違反を理由に登録無効審判(2023-890089)を請求した処、特許庁は不成立審決をしたため、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて、提訴した事案である。引用商標は、「UNITED/ユナイテッド」(登録第2053119号商標 25類)外4件である。
判 旨
本件商標と各引用商標の類否について ⑴ 外観の比較 本件商標と各引用商標は、外観において構成する文字数が異なり、引用商標1については文字の種類が異なるものも含まれることから、本件商標と各引用商標はいずれも外観が相違する。 ⑵ 称呼の比較 本件商標の称呼「ユナイテッドゴールド」と各引用商標の称呼「ユナイテッド」は、構成音及び構成音数が異なり、本件商標の称呼のうちの「ゴールド」の音の有無によって語感も異なるから、本件商標と各引用商標はそれぞれ称呼が相違する。⑶ 観念の比較 観念について、本件商標を構成する「UNITED」と「GOLD」のそれぞれの意味からすると、一体の構成である本件商標からは特定の観念が生じるものとは認められない一方、各引用商標からは、前記の「UNITED」の意味に応じて、「結ばれた、団結した、連合した」程度の観念が生じるものと認められ、観念において比較することはできない。 ⑷ 類否の判断 本件請求商品役務と、各引用商標の指定商品は、いずれもその指定商品・ 役務の内容から、需要者は一般の消費者であると認められるところ、一般の消費者は、必ずしも商標の構成を細部にわたり記憶して取引に当たるものとはいえないから、そのような需要者が通常有する注意力の程度を踏まえて、本件商標と各引用商標の外観、称呼及び観念の要素を総合勘案することとなる。本件商標と各引用商標は、外観、称呼においていずれも異なる上に、観念においても比較できないから、時と所を異にして離隔的に観察した場合、本件商標と各引用商標とは互いに紛れるおそれのある類似の商標であるとは認められない。
コメント
本件事案では、本件商標の要部観察の是非が争われたが、知財高裁もこれを否定し、審決の判断と同様となった。「UNITED」も「GOLD」も、わが国で知られた平易な英語で、「UNITED」が支配的部分で要部との原告の主張は斥けられた。過去にはそのような裁判例もあった(昭和57年7月28日 東京高裁昭和56年(行ケ)第272号 審決取消訴訟判決集昭和57年1097頁)が、現在では、両語に、識別力の差はそうないだろう。
原告の挙げた例では、「GOLD」の語が、「アリナミン」、「セブンプレミアム」、「ミキハウス」等の識別力の強いブランド名と組み合わせて用いられているもので、これらは、「UNITED」の語が強い識別力を有しない本件とは事情が異なるとされた。