2025-02-04

イタリア料理の商標あれこれ100選「第10話:ACQUA PAZZA(アックア パッツァ)」ほか

 こんにちは、鈴木三平です。
 第10話はスープ関係です。「ACQUA PAZZA」「MINESTRONE」「RIBBOLITA」「ZUPPA」を扱います。今回も「使用安全確保」「オープン化確認」のような出願が多いようです。

Ⅰ.ACQUA PAZZA
1.辞書情報
acqua[アックア](町田亘・吉田政国編『イタリア料理用語辞典』白水社 1992年初刷3ページ)
女 水.
注:女=女性名詞

「コトバンク(出典:和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典)」
【acqua pazza(イタリア)】
「イタリア料理の一つ。白身魚をオリーブオイルで焼き、あさり・トマト・オリーブ・アンチョビー・ケッパーなどとともに水や白ワインで煮たもの。」
https://kotobank.jp/word/%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%A2%E3%83%91%E3%83%83%E3%83%84%E3%82%A1-666139#w-1494038

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)「伊勢丹 店舗情報」のウェブサイト
「伊勢丹 新宿店 | 春の魚でアクアパッツアを作ろう。」の見出しの下、「アクアパッツァとは『狂った水』という意味。由来は不明ですが、一般的な説として漁師さんが船の上で海水を使って作った……という話が知られています。」
https://www.mistore.jp/store/shinjuku/feature/foods/pickup/2102/19xx_0113.html

(2)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「アクアパッツァ」。
 イタリア料理用語辞典に載っていない割に、掲載数は多い。

 

4.コメント
 商標(1)はレストランの名称等の商標。アクアパッツァの専門店というのもなさそうだから、レストランに「ACQUA PAZZA」は、「商標として機能し」、独占的に使う権利があり、実際、名店の名称のようだ。もっとも、アクアパッツァのスープや惣菜、それ用の調味料の商品に「ACQUA PAZZA」と表示するものをやめさせることはできないと思う。(2)については、指定商品は一般的な表現しか認められない中で、「アクアパッツァ」が「魚入りのスープ」であるという表示が認められているので、上記食品類について、「アクアパッツァ」を使う自由の一応の確認ができたと言っていいだろう。なお、イタリア料理用語辞典に「acqua」はあるのだが、なぜか「acqua pazza」がない。

 

Ⅱ.MINESTRONE
1.辞書情報
minestrone[ミネストローネ](111)
男 パスタまたは米,豆類,じゃがいも,かぼちゃ等を入れた濃い野菜スープ.
注:男=男性名詞

3.商標の状況

 

3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「ミネストローネ」

 

4.コメント
 本件商標は、商標の一部に「ミネストローネ」があるが、指定商品が「即席ミネストローネ」であり、これが認められたということは、「ミネストローネ」が「商標として機能しない」と判断がされたものである。
 なお、清涼飲料,果実飲料について、「ミネストロ-ネ」の文字からなる登録第3019686号商標(商願平04-139278)があるが、スープ類について権利が及ぶものではなく、無関係と言ってよさそうである。

 

Ⅲ.RIBOLLITA
1.辞書情報
ribollita[リボッリータ](上記『イタリア料理用語辞典』144ページ)
女(トスカーナ地方の)いんげん豆とキャベツの野菜スープの残りものに玉ねぎを加えて煮直したスープ.
注:女=女性名詞

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)「旅行好き女子の20代ブログ✨」のウェブサイト(2023-07-29 07:56:04)
「リボリータ たくさんの野菜と手の込んだ伝統料理」の見出しの下、「日本では加熱してパンに浸して食べれる商品リボリータ』が2004年にエスビー食品から発売され、トマト味、コンソメ味、クリーム味のバリエーションで商品展開が行われたようです!」との記載がある。
https://ameblo.jp/0220518/entry-12814002824.html
(2025年1月18日閲覧)
(2)「日本食糧新聞・電子版」のウェブサイト
「5種野菜と白いんげん豆のスープ(エム・シーシー食品)2023年9月1日発売」
「イタリアの家庭料理“リボリータ”をイメージし、香りのよいオリーブオイルを
ベースとした。砕いたパンを入れてとろみを付け、風味豊かに仕上げた。」
https://news.nissyoku.co.jp/foodsnews/230720-15-02
(2025年1月18日閲覧)
(3)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「リボリータ」の検索結果は0件

4.コメント
 本件商標は、出願時から指定商品を「リボリータのもと」だけにしたもので、自由使用の確立に一肌脱いだ感じ。


Ⅳ.ZUPPA
1.辞書情報
zuppa[ツッパ](上記『イタリア料理用語辞典』187ページ)
女 スープの総称.
注:女=女性名詞

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)上記『ホントは知らないイタリア料理の常識・非常識』174ページ
「ズッパzuppa
 パンを具として加えたり、添えたりしたさまざまなタイプのスープ。」
(2)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「ズッパ & スープ」の検索結果

 「ズッパ」単独の検索はうまくいかず、「スープ」とかけ合わせても少ししか出てこなかった。

4.コメント
 本件商標は、「商標として機能しない」という理由で登録拒絶された。商品の需要者(狭義にはイタリア料理店)では「スープ」と理解されるということなのだろう。

<注>
 構成は、「1.辞書、2.商標の状況、3.その他、4.コメント」とした。商標・イタリア料理・調査、いずれのプロからも、「半人前」だとの集中砲火を浴びるかもしれないが、多少不十分な点があろうとも、面白いと思える発見があれば幸いである。商標についても、時代によっては情報が薄いところもあり、間違っているところ、私の知らないネタがあれば、「タレコミ」は大いに歓迎したい。
 なお、出願人、権利者は表示せず、紹介する商標中に、各社のブランドマークにあたる部分がある場合にも、”trademark”という表示とする。記した番号から調べればすぐ分かることであるが、筆者のいた会社も含めた当事者等が悪者にされる等、話題があらぬ方向に逸れることを少しでも避けたいからである。
* 「指定商品又は指定役務」は、問題となった部分のみで、全部を表示していないことがある。
* 「消滅」は、存続期間(分納)満了、拒絶査定・審決、取消の日等で、確定の日でないものもある。
* 番号は出願番号と、あるものは異議・審判番号のみとし、登録されたものも、登録日のみとして、その番号は省略した。

<これまでのあらまし>
10話まできたので、これまで取り上げたものを整理

用語 分類 累計数
tirami su, tiramisu(ティラミス) 菓子 1
Margherita(マルゲリータ) ピザ・パン 2
peperoncino(ペペロンチーノ) 調味料 3
balsamico(バルサミコ) 調味料 4
dente(デンテ) 加工穀物 5
limoncello(リモンチェッロ),grappa(グラッパ),amaretto(アマレット) 酒類 8
Affogato(アフォガート),Cannoli(Cannolo)(カンノーリ,カンノーロ),Zaleti(Zalet)(ザレッティ,ザレット), 菓子 11
Bolognese(ボロネーゼ),Genovese(ジェノベーゼ),Milanese(ミラネーゼ),Napoletana(ナポレターノ),Siciliano(シチリアーノ) 調味料(地域名) 16
formaggio(フォルマッジョ),gorgonzola(ゴルゴンゾーラ),mascarpone(マスカルポーネ),mozzarella(モッツァレッラ),Parmigioano Reggiano(パルミジャーノ。レッジャーノ) 乳製品 21
10 acqua pazza(アックア パッツァ),minestrone(ミネストローネ),ribollita(リボッリータ),zuppa(ツッパ) スープ 25

今回10話めで、累計25件となった。次回は、ソース(料理法)について扱う予定。


<訂正:原文は修正済み>
第7回
<誤>「calnnolo[カンノーロ](上記の『イタリア料理用語辞典』34ページ)」
<正>「cannolo[カンノーロ](上記の『イタリア料理用語辞典』34ページ)」
“cannolo”とすべきところが”calnnolo”と、余計な”l”が入っている箇所がありました。お詫びして訂正します