2025-02-19

イタリア料理の商標あれこれ100選「第12話:bellini[ベッリーニ]ほか

 こんにちは、鈴木三平です。
 第12話はカクテル名です。「BELLINI」と「NEGRONI」を取り上げます。

Ⅰ.BELLINI
1.辞書情報
bello[ベッロ] (町田亘・吉田政国編『イタリア料理用語辞典』白水社 1992年初刷19ページ)
形 美しい,きれいな,見事な,立派な.
bellini[ベッリーニ]
「コトバンク」のウェブサイト(出所:小学館伊和中辞典)
「bellino」の見出しの下、
「[形][bello の[小]]かわいい;気取った.」との記載がある。
https://kotobank.jp/itjaword/bellino#goog_rewarded
(2025年1月24日閲覧)
注:形=形容詞

2.商標の状況

<異議2024-900005の異議決定から抜粋>
 本件商標の構成中「BELLINI」の文字は、上記(1)ウのとおり桃(ピーチネクター)とスパーリングワインを使用したカクテルの名称を表すものとして広く一般に使用されているものであるから、本件商標の指定商品の取引者及び需要者をして、上記カクテルであること、すなわち商品の品質等を表示するにすぎないものであり、自他商品識別標識としての機能を有しないか、極めて弱いものというのが相当であるから、「BELLINI」の文字部分から、出所識別標識としての称呼、観念は生じないというべきである。
そうすると、本件商標の構成中の「BELLINI」の文字部分が出所識別標識として、分離抽出されることはないものというのが相当である。
そこで、「BELLINI」の文字からなる使用商標と上記構成からなる本件商標とを比較してみれば、両者の構成態様は明らかに相違するものであるから、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであって、別異の商標というべきものであるから、商標の類似性の程度は低いものである。

 

3.その他情報
(1)吉川敏明『ホントは知らないイタリア料理の常識・非常識』 柴田書店 2010 188ページ
「その名はベッリーニ Bellimo。桃のピュレをプロセッコ(ヴェネト州の発泡性ワイン)で割ったもので、ルネッサンス期のヴェネツィア派画家ジョヴァンニ・ベッリーニの名前をつけたのです。」
(2)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「ベリーニ & カクテル」の検索結果

 

4.コメント
 その他情報(1)によれば、辞書の意味とは直接関係なさそうな感じ。まず、商標(1)~(3)の商標権者は同一で、(4)(5)の商標登録に対して、「使用すれば商品の出所を混同するということ、フリーライド(いわば有名ブランドのただ乗り)の不正目的があることから、登録を取り消すべき」と主張した。しかし、少なくとも(4)(5)の登録時点では、「BELLINI」は「桃とスパークリングワインを使用したカクテル」の名称として知られているから、「商標として機能する」部分ではないとして、これらの理由による登録取り消しが否定されている。つまり、たとえば(4)(5)のような態様で使用しても、(1)~(3)の「BELLINI」部分は「商標として機能しない」部分だから、類似するものの使用とはならないという判断である。(2)と(3)の審査の段階では、インターネット検索で「BELLINI」はじゅうぶん引っかかる状況であったはずだから、指定商品について、「桃を使用したカクテル」程度に限定させるべきではなかったかと思う。とすると、(4)(5)も同様の商品のみの登録とすべきだったのかもしれない。


Ⅱ.NEGRONI
1.辞書情報
negroni[ネグローニ](上記『イタリア料理用語辞典』116ページ)
男 カンパリを使ったカクテル.
注:男=男性名詞

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)「CHEER UP! 毎日のワクワクした暮らしを応援するポータルメディア」のウェブサイト
 「イタリアの習慣『アペリティーヴォ』におすすめのカクテルレシピ」の見出しの下、「ネグローニの作り方:同量のカンパリ、チンザノ・ベルモット・1757・ロッソ、ブルドッグ・ジンを氷の入ったグラスに注ぎます。15秒間ステアして、最後にオレンジのピールかスライスを飾ります。」との記載がある。https://blog.sapporobeer.jp/eat/13756/(2024年11月19日閲覧)
(2)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「ネグローニ」の検索結果
 2024年に1件のみであった。確かに一般消費者に広く知られているとは言えそうもない。

4.コメント
 「Negroni」および「Cocktail」の文字からなる商標。「商標として機能しない(当該カクテル以外に使用すれば品質誤認)」というような理由で登録を拒絶されている。ロゴ的な文字の出願だが、「ブランド」というより「内容説明」というところなのだろう。一般消費者に広く知れていなくとも、イタリア料理店やパブ等でカクテルの内容を表すものとして知られていれば、「商標として機能しない」と言えるのだろう。

<注>
 構成は、「1.辞書、2.商標の状況、3.その他、4.コメント」とした。商標・イタリア料理・調査、いずれのプロからも、「半人前」だとの集中砲火を浴びるかもしれないが、多少不十分な点があろうとも、面白いと思える発見があれば幸いである。商標についても、時代によっては情報が薄いところもあり、間違っているところ、私の知らないネタがあれば、「タレコミ」は大いに歓迎したい。
 なお、出願人、権利者は表示せず、紹介する商標中に、各社のブランドマークにあたる部分がある場合にも、”trademark”という表示とする。記した番号から調べればすぐ分かることであるが、筆者のいた会社も含めた当事者等が悪者にされる等、話題があらぬ方向に逸れることを少しでも避けたいからである。

* 「指定商品又は指定役務」は、問題となった部分のみで、全部を表示していないことがある。
* 「消滅」は、存続期間(分納)満了、拒絶査定・審決、取消の日等で、確定の日でないものもある。
* 番号は出願番号と、あるものは異議・審判番号のみとし、登録されたものも、登録日のみとして、その番号は省略した。

 今回12話めで、累計32件となった。次回は、ワインの一部について扱う予定。