2025-02-03

工藤莞司の注目裁判:不使用取消審判で使用商標の役務が争われた事例

(令和6年12月19日 知財高裁令和6年(行ケ)第10054号 「オルネルマルシェ」不使用取消事件)

事案の概要 
 原告(審判被請求人・商標権者)は本件商標(登録第5990795号)の商標権者で、被告(審判請求人)は本件商標の指定役務中「35類 衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(本件取消請求役務)に係る商標登録について、商標法50条1項の登録取消審判(2023-300219)を請求した処、特許庁は、本件取消請求役務に係る登録を取り消すとの成立審決をしたため、原告は、知財高裁に対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。争点は、原告立証の原告店舗の外観に使用商標を表示している営業に係る役務が、本件取消し請求に係る役務か否かである。

判 旨 
 裁判所は、本件取消請求に係る役務「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品」を「一括して取り扱う」という指定役務の名称の文言をも考慮すると、「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」とは、衣料品・飲食料品・生活用品の各商品を一事業所 において扱っている場合であって、その取扱い規模がそれぞれ相当程度あり、かつ、継続的に行われている場合をいうと解するのが相当であり、典型的には、百貨店や総合スーパーが提供する役務が挙げられると解される、・・・・・原告店舗はパリの日用品店をアレンジしたライフスタイルショップであり、ファッション、ファッショション小物やキッチン用品など衣料品や生活用品を中心とした商品を取り扱っており、これらの商品が店舗の売上げに占める割合が相当程度多いものと認められるのに対し、飲食料品の販売数や売上金額は衣料品や生活用品に比して小規模である。これに加え、・・・本件要証期間及びその前後の原告店舗における商品の展示方法をも考慮すると、本件要証期間における飲食料品の販売については、コーヒーカップやマグカップのような食器類などと合わせて販売されているものであって、生活用品の小売等に付随して取り扱われているものにすぎず、原告店舗において、衣料品、飲食料品及び生活用品の各商品を「一括して取り扱っている」と評価することはできず、その他これを認めるに足りる証拠はない。以上によると、本件要証期間において、原告店舗は、「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を行っていたものとはいえない。

コメント 
 本件事案は、不使用取消審判において、被請求人(原告)が立証した店舗の外観に使用商標を表示している営業に係る役務が、取消請求に係る役務「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」か否かが争点で、知財高裁もこれを否定し、審決と同じ認定、判断となった。
分かりやすく言えば、これら役務は百貨店や総合スーパーに係る役務であるが、立証役務は日用品販売に係る役務ということで、登録商標の使用は立証されたが、使用役務が取消請求に係る役務外であったので、成立審決が維持されたのである。