(令和7年1月16日 知財高裁令和6年(行ケ)第10068号 同旨令和7年1月16日 知財高裁令和6年(行ケ)第10067号 「マイフォーカス」事件)
事案の概要
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原告(被請求人)は、本件商標につき、令和元年9月27日登録出願をして商標登録(登録第6412642号左掲参照)を受けた。原告は、令和3年10月27日付け書面により、被告(審判請求人)に対し、被告各商標を日本向けのウェブサイトで使用する行為が、本件商標に係る商標権侵害に該当するなどとして、被告各商標の使用中止を求める警告をした。被告は、本件商標の登録を無効にすることについて審判(2022-890005)を請求し、無効理由として、本件商標は商標法4条1項7号(公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標)に違反該当すると主張した。特許庁は成立審決をした。原告は、知財高裁対し、審決の取消しを求めて提訴した事案である。
判 旨
原告の提出したすべての証拠によっても、本件商標が平成27年10月に作成された事実及び原告各使用商標が平成28年3月、同29年3月(及び同30年3月)に使用された事実を認めるに足りず、他にこれを認めるに足りる証拠がない。被告各商標の使用が開始された平成29年9月30日以降、本件商標が被告各商標と偶然に一致した可能性も認められず、本件商標は、被告各商標を剽窃したものと推認され、これを覆すに足りる証拠はない。原告は、被告がオーストラリアで使用していた被告各商標が我が国において商標登録されていないことを奇貨として、我が国における被告各商標の使用を阻止すること、さらには、被告の日本におけるビジネスを妨害することのみを目的として、被告各商標を剽窃した上、本件商標の作成時期を偽り、本件商標の登録を得たものと認めるのが相当であって、このような商標は、登録出願の経緯に社会相当性を欠くというべきであるから、商標法4条1項7号該当性に関する本件審決の判断に誤りはない。
商標法4条1項19号は、「前各号に掲げるものを除く」と規定されているから、同項7号に該当する場合には、同項19号の適用はない。本件においては、原告の登録出願の経緯に社会相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するという理由で同項7号該当性が認められる以上、同項19号の趣旨にかかわらず、本件商標の登録は認められないことになるのであって、これと異なる前提に立つ原告の前記主張は採用することができない。
コメント
本件事案は、原告の本件商標は被告使用商標を剽窃した登録として、公序良俗違反に当たり4条1項7号該当性が認められて、審決が維持されたものである。原告は偶然の一致として、わが国での被告使用以前からの採択、使用事実等を立証しようとしたが、裁判所に悉く斥けられた。また、19号が存在する現在では、7号適用の不適を主張したが、裁判所は、「前各号に掲げるものを除く」と規定されて7号に該当する場合には、19号の適用はないとの解釈を示し、矛盾はないとした。本件商標と被告使用商標は同一である。