2025-03-25

イタリア料理の商標あれこれ100選「第17話:カフェラッテとカプチーノ」

 こんにちは、鈴木三平です。
 第17話は「カフェラッテとカプチーノ」。このシリーズでノンアルコール飲料が少ないのは、酒ばかり飲んでいる筆者の不勉強も一因かと思います。飲料が、ノンアルコールだと商標問題が少ないとは、ついぞ聞いたことがないですから。

Ⅰ.CAFFÈLATTE
1.辞書情報
caffè[カッフェ](町田亘・吉田政国編『イタリア料理用語辞典』白水社 1992年初刷30ページ)
男①コーヒーの木,コーヒー豆,コーヒー.
~e latte カフェオレ,牛乳入り,コーヒー.

Caffellatte[カッフェッラッテ](同31ページ)
《無変》男 カフェオレ
注:男=男性名詞;無変=無変化

2.商標の状況

<審判平08-018962の審決(商標登録を拒絶した査定を維持)から抜粋>
 指定商品中「エスプレッソに泡立てたミルクを加えたコーヒー」に使用しても、商品の普通名称を表示するにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果しえないものであり…

<拒絶理由通知書(抜粋)>
 本願商標は、これをその指定役務中「飲食物の提供」に使用しても、当該役務が「温めたミルクを入れたエスプレッソコーヒーの飲料を提供する役務」であることを認識・理解させるにとどまるというべきですから、単に役務の質その他の特徴を表示するにすぎないものと認めます。

3.その他情報
新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「カフェラテ OR カフェラッテ」の検索結果

 今世紀に入ってからはコンスタントで、今や知らない成人はほとんどいないだろう。

4.コメント
 商標(1)の通り、「コーヒー入り清涼飲料」について商標「Caffè Latte」が登録されているが、(2)の「その商品の普通名称」という判断から、いまやコーヒー類の「カフェラテ\Caffè Latte」は「商標として機能しない」ものであり、自由使用であるといえる。この「コーヒー入り清涼飲料」は公正競争規約の定義もあるが、特許庁的にはもっとコーヒーが薄いものをイメージしていると思う(審査官は公正競争規約は知らないし、商標法的にはほぼ無関係といってもよい)。(1)と(2)とは、一応審査基準上は、商品として抵触しないことになっている。
 ちなみに、(3)は外食サービス向けの出願であるが、「カフェラテ\Caffè Latte」は外食の提供物であって、「商標として機能しない」というような理由で登録を拒絶されている。
 商標(1)(3)は綴りはイタリア語だが、アクセント記号は、イタリア語辞書とは逆向き(フランス風)である。あまりアクセント記号に縁がない日本人だし、判断に影響するとも思えず、ご愛敬といったところか。


Ⅱ.CAPPUCCINO
1.辞書情報
cappuccino[カップチーノ](上記『イタリア料理用語辞典』35ページ)
男 カプッチーノ
caffè[カッフェ](同30ページ)
~ cappuccino カプチーノコーヒー
注:男=男性名詞

「コトバンク」のウェブサイト(出典:デジタル大辞泉)
 「カプチーノ 〈イタリア〉cappuccin」の見出しの下、「エスプレッソコーヒーに、蒸気で温めながら泡立てた牛乳(スチームドミルクフォーム)を加えた飲み物。」との記載がある。
https://kotobank.jp/word/%E3%81%8B%E3%81%B7%E3%81%A1%E3%83%BC%E3%81%AE-3209379#w-465850

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)吉川敏明『ホントは知らないイタリア料理の常識・非常識』 柴田書店 2010 43ページ
「cappuccino/カプチーノの名称は、液体の色がカプチン修道士会の茶色の修道服に似ていることから名付けられた」「食後には絶対飲まないカプチーノ」「私の店では、きっぱりとカプチーノはお出ししません」

(2)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「カプチーノ and (カフェ or コーヒー)」の検索結果

 

4.コメント
 「カプチーノ」については、「素人好み」メニューのように扱われている節があり、イタリア料理用語辞典等の扱いも、いささか冷たい印象が残る。90年代から新聞にも登場するようになり、商標については、コーヒー類に「カプチーノ」を使用すると「ミルク入り」を意味するので「商標として機能しない」と判断がされているようだが、「その他の菓子」等について認めてよかったかについては疑問も残る。菓子等については先登録もあるが、コーヒー類については先の拒絶例があるのかもしれない(古い拒絶例の中には、検索ができないものがある)。


<注>
 構成は、「1.辞書、2.商標の状況、3.その他、4.コメント」とした。商標・イタリア料理・調査、いずれのプロからも、「半人前」だとの集中砲火を浴びるかもしれないが、多少不十分な点があろうとも、面白いと思える発見があれば幸いである。商標についても、時代によっては情報が薄いところもあり、間違っているところ、私の知らないネタがあれば、「タレコミ」は大いに歓迎したい。
 なお、出願人、権利者は表示せず、紹介する商標中に、各社のブランドマークにあたる部分がある場合にも、”trademark”という表示とする。記した番号から調べればすぐ分かることであるが、筆者のいた会社も含めた当事者等が悪者にされる等、話題があらぬ方向に逸れることを少しでも避けたいからである。
* 「指定商品又は指定役務」は、問題となった部分のみで、全部を表示していないことがある。
* 「消滅」は、存続期間(分納)満了、拒絶査定・審決、取消の日等で、確定の日でないものもある。
* 番号は出願番号と、あるものは異議・審判番号のみとし、登録されたものも、登録日のみとして、その番号は省略した。

 今回17話めで、累計51件、ようやく100選の半分を越えた。次回は、肉製品について扱う予定。