2025-03-04

イタリア料理の商標あれこれ100選「第14話:Amarone[アマローネ]ほか」

 こんにちは、鈴木三平です。
 第14話はワインの第2弾。「AMARNE」「ASTI」「BARBARESCO」「BAROLO」「GARGANEGA」を取り上げます。正直なところ、全く知らないものも複数ありました。
<参考文献>
イタリアワインの教科書-イタリアワインのコンプリートブック よくわかる基礎からDOCG&DOC最新情報まで(IKAROS MOOK)
著者 林 茂 東京 イカロス出版 2016年11月

Ⅰ.AMARONE
1.辞書情報
Amarone[アマローネ](町田亘・吉田政国編『イタリア料理用語辞典』白水社 1992年初刷8ページ)
男 北イタリア産の赤ワイン Reccioto della Valpolicellaの辛口につける名称.
注:男=男性名詞

2.商標の状況
Amarone[アマローネ](8)

 

3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「(アマローネ」の検索結果

 1998年から、細々と来ていたのに、2003年を最後に「消滅」してしまった。仮名遣いでも変わったのだろうか?

(2)ワインに関する地理的表示の登録例
Amarone della Valpolicella
File number PDO-IT-A0435
https://ec.europa.eu/agriculture/eambrosia/geographical-indications-register/details/EUGI00000003182

4.コメント
 商標(2)は(1)と類似とされずに登録されたが、組合組織(Camera di Commercio Industria, Artigianato e Agricoltura di Verona)による団体商標であり、北イタリアの地域ブランド的なものであると考えるのが妥当であろう。


Ⅱ.ASTI
1.辞書情報
 Asti[アスティ](上記『イタリア料理用語辞典』14ページ)
①固 女 イタリア北部ピエモンテ州の都市. ②男 アスティ産の発泡性白ワイン=~ spumante.
注:固=固有名詞 女=女性名詞

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「アスティ and ワイン」の検索結果
 ノイズを除去した。

 

(2)ワインに関する地理的表示の登録例
Cisterna d’Asti
File number PDO-IT-A1092
https://ec.europa.eu/agriculture/eambrosia/geographical-indications-register/details/EUGI00000004895
Cisternaはcistèrnaに「(水量の多い)泉」の意味があるが、不明。
https://kotobank.jp/itjaword/cisterna#w-2244134
(コトバンク(出典 伊和中辞典 2版))

Dolcetto d’Asti
File number PDO-IT-A1174
https://ec.europa.eu/agriculture/eambrosia/geographical-indications-register/details/EUGI00000006259
dolcettoについては、「dolcéttoが「1 (甘味の強い)ブドウの一品種.2 ドルチェット(ピエモンテ産の赤ワイン).」である。(コトバンク(出典 伊和中辞典 2版))
https://kotobank.jp/itjaword/dolcetto#w-2250759

4.コメント
 商標(1)と(2)とは日本では併存していないが、ともに”Asti”は産地の表示であるから、「商標として機能する」ものとはいえない。


Ⅲ.BARBARESCO
1.辞書情報
Barbaresco[バルバレスコ](上記『イタリア料理用語辞典』17ページ)
男 ピエモンテ州バルバレスコ地方産の赤ワイン.
注:男=男性名詞

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「バルバレスコ」の検索結果

 一般消費者に知られているとまでは言えそうもない。

(2)ワインに関する地理的表示の登録例
Barbaresco
File number PDO-IT-A1399
https://ec.europa.eu/agriculture/eambrosia/geographical-indications-register/details/EUGI00000004886

4.コメント
 商標は組合名義の出願であり、地域ブランド的、団体商標的なものであるといえる。


Ⅳ.BAROLO
1.辞書情報
Barolo[バローロ](上記『イタリア料理用語辞典』18ページ)
男 ピエモンテ州バローロ地方産の赤ワイン.
注:男=男性名詞

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「バローロ」の検索結果
 さすがに「バローロ」となってくると、それなりに記事にもなっているようだが、ときどきスポーツのチーム名等のノイズもあった。

 

(2)ワインに関する地理的表示の登録例
Barolo
File number PDO-IT-A1389
https://ec.europa.eu/agriculture/eambrosia/geographical-indications-register/details/EUGI00000004441

4.コメント
 組合名義の出願であり、地域ブランド的、団体商標的なものであるといえる。


Ⅴ.GARGANEGA
1.辞書情報
Garganega[ガルガーネガ](上記『イタリア料理用語辞典』80ページ)
①女 ぶどうの木の一品種 ②男 ガルガーネガ種のぶどうからつくるヴェネト州産の白ワイン.
注:女=女性名詞

2.商標の状況

 

3.その他情報
(1)新聞記事(ヨミダス・読売新聞)におけるキーワード「ガルガネーガ OR ガルガーネガ」の検索結果
 0件であった

(2)ワインに関する地理的表示の登録例
 これも0件であった。品種であって地理的な表示ではないためか。

(3)「ワイン通販ならワインショップ カーヴ・ド・ラ・マドレーヌ」のウェブサイト
 「ガルガネガ ワインの商品一覧」の見出しの下、「ガルガネガは、イタリアのヴェネト州を代表する白ワイン用のブドウ品種で、ソアーヴェというワインの主要品種として有名です。」との記載がある。
https://www.adv.gr.jp/shop/products?variety%5B91%5D=1&srsltid=AfmBOoodxsf1Lhsa8upiWXrb7lLkjhTlygn6jxKuBRlCW9aod2ju7mfv
(2025年2月11日閲覧)

4.コメント
 いわゆる「小売等役務(小売や卸サービス)」に関する商標で、組合ではなく一般企業の出願である。出願時の指定役務から、実質的には「果実酒の小売等役務」部分を削除して登録が認められている。Trebbianoはワインの一種類だから、ワイン(果実酒)の小売サービス等については「商標として機能しない」という判断がされたといえそうである。つまり、ガルガネーガ(ガルガーネガ)といえるワインに、上記表示は自由使用と判断されたということである。ヨミダス等から見るに、あまり知られているものではなさそうだが、やはり一般企業に商標権を与えるのはまずいと思う。

当初の指定役務飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
補正後、登録が認められた指定役務(酒類に関するもののみ記載)泡盛・合成清酒・焼酎・白酒・清酒・直し・みりんの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ビール・洋酒・酎ハイの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,中国酒の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬味酒の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供

 

<注>
 構成は、「1.辞書、2.商標の状況、3.その他、4.コメント」とした。商標・イタリア料理・調査、いずれのプロからも、「半人前」だとの集中砲火を浴びるかもしれないが、多少不十分な点があろうとも、面白いと思える発見があれば幸いである。商標についても、時代によっては情報が薄いところもあり、間違っているところ、私の知らないネタがあれば、「タレコミ」は大いに歓迎したい。
 なお、出願人、権利者は表示せず、紹介する商標中に、各社のブランドマークにあたる部分がある場合にも、”trademark”という表示とする。記した番号から調べればすぐ分かることであるが、筆者のいた会社も含めた当事者等が悪者にされる等、話題があらぬ方向に逸れることを少しでも避けたいからである。
* 「指定商品又は指定役務」は、問題となった部分のみで、全部を表示していないことがある。
* 「消滅」は、存続期間(分納)満了、拒絶査定・審決、取消の日等で、確定の日でないものもある。
* 番号は出願番号と、あるものは異議・審判番号のみとし、登録されたものも、登録日のみとして、その番号は省略した。

 今回14話めで、累計42件となった。次回も、ワインの一部について扱う予定。